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NHK 【全文】中学生が追悼式で朗読 ことしの「平和の詩」とは 沖縄 2021年6月23日 16時42分
沖縄戦から76年の「慰霊の日」。糸満市摩文仁の平和祈念公園では沖縄県主催の戦没者追悼式が開かれ、宮古島市立西辺中学校2年、上原美春さんがことしの「平和の詩」に選ばれた「みるく世(ゆ)の謳(うた)」を朗読しました。
「みるく世」は、沖縄で「平和な世」を意味します。「みるく世の謳」の全文です。
12歳。
初めて命の芽吹きを見た。
生まれたばかりの姪は小さな胸を上下させ
手足を一生懸命に動かし
瞳に湖を閉じ込めて
「おなかすいたよ」
「オムツを替えて」と
力一杯、声の限りに訴える
大きな泣き声をそっと抱き寄せられる今日は
平和だと思う。
赤ちゃんの泣き声を愛おしく思える今日は
穏やかであると思う。
その可愛らしい重みを胸に抱き
6月の蒼天を仰いだ時
一面の青を分断するセスナにのって
私の思いは76年の時を超えていく
この空はきっと覚えている
母の子守唄が
空襲警報に消された出来事を
灯されたばかりの命が消されていく瞬間を
吹き抜けるこの風は覚えている
うちなーぐちを取り上げられた沖縄を
自らに混じった鉄の匂いを
踏みしめるこの土は覚えている
まだ幼さの残る手に
銃を握らされた少年がいた事を
おかえりを聞くことなく
散った父の最後の叫びを
私は知っている
礎を撫でる皺の手が
何度も拭ってきた涙
あなたは知っている
あれは現実だったこと
煌びやかなサンゴ礁の底に
深く沈められつつある
悲しみが存在することを
凛と立つガジュマルが言う
忘れるな、本当にあったのだ
暗くしめった壕の中が
憎しみで満たされた日が
本当にあったのだ
漆黒の空
屍を避けて逃げた日が
本当にあったのだ
血色の海
いくつもの生きるべき命の
大きな鼓動が
岩を打つ波にかき消され
万歳と投げ打たれた日が
本当にあったのだと
6月を彩る月桃が揺蕩う
忘れないで、犠牲になっていい命など
あって良かったはずがない事を
忘れないで、壊すのは、簡単だという事を
もろく、危うく、
だからこそ守るべきこの暮らしを
忘れないで
誰もが平和を祈っていた事を
どうか忘れないで
生きることの喜び
あなたは生かされているのよと
いま摩文仁の丘に立ち
私は歌いたい
澄んだ酸素を肺いっぱいにとりこみ
今日生きている喜びを
震える声帯に感じて
決意の声高らかに
みるく世ぬなうらば世や直れ
平和な世界は私たちがつくるのだ
共に立つあなたに
感じて欲しい
滾る血潮に流れる先人の想い
共に立つあなたと
歌いたい
蒼穹へ響く癒しの歌
そよぐ島風にのせて
歌いたい
平和な未来へ届く魂の歌
私たちは忘れないこと
あの日の出来事を伝え続けること
繰り返さないこと
命の限り生きること
決意の歌を歌いたい
いま摩文仁の丘に立ち
あの真太陽まで届けと祈る
みるく世ぬなうらば世や直れ
平和な世がやってくる
この世はきっと良くなっていくと
繋がれ続けてきたバトン
素晴らしい未来へと
信じ手渡されたバトン
生きとし生けるすべての尊い命のバトン
今、私たちの中にある
暗黒の過去を溶かすことなく
あの過ちに再び身を投じることなく
繋ぎ続けたい(引用ここまで)
みるく世を創るのはここにいるわたし達だ
「みるく世を創るのは私たち」 追悼式典で平和の詩を朗読した中学生が決意 沖縄慰霊の日
琉球新報 2021年6月23日 14:14
https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1343063.html
「みるく世ぬなうらば世や直れ」(平和なら暮らしは良くなっていくよ)―。透き通る声が会場に響いた。平和の詩を朗読した宮古島市立西辺中学校2年の上原美春さん(13)は、小さいころから祖父が歌ってくれる宮古島民謡「豊年の歌」の一節を詩の披露した。戦後76年。戦争体験者が減る中、平和の尊さを伝える使命を感じ「みるく世を創るのはここにいる私たちだ」と力強く締めくくった。
激しい雨の中で朗読した。詩には空や風、土など沖縄の豊かな自然がふんだんに登場する。壇上では「戦争が激しかったのは5月頃と聞いている。ちょうど、今吹いているかーちーべー(夏至南風)も吹いていたのだろう」と、76年前を想像していた。
祖母も戦後生まれで、沖縄戦のことを体験者から聞いたことはない。体験を語れる人が減少していく現状について「目をつぶってはいられない。目の前の問題から、世界の平和につなげていきたい」と決意する。
姉の愛音さん(21)も4年前に同じ場所で平和の詩を朗読した。そのときから、平和の詩を朗読するのは美春さんの夢だったという。「今ある私たちの日常はありがたいもの。人の命の大切さを感じ、平和な世界を発信していけたら」と話した。(引用ここまで)
中日新聞 沖縄慰霊の日、姉に続き平和の詩を朗読 2021年6月23日 16時00分