憲法の理念と相いれない現実が、
日本社会に横たわることを
コロナがあぶり出している
「国民のために働く内閣」という
政権のキャッチフレーズを改めてアピールした。
それは言うまでもなく
立憲政治の原点であり、
憲法の崇高な理念を生かした国政運営を実践してこそ、
初めて成り立つ。
憲法の条文の全てを現実と結びつけると
憲法と理解されていないことが判る!
憲法を活かす新しい政権を!!
西日本新聞 コロナ禍と憲法/今こそ理念生かす国政をNew 2021/1/7
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/679617/
現下の新型コロナウイルス感染拡大を巡る社会の混乱は、突き詰めれば憲法問題である。
政府の対策は後手後手に回っている。国民の命は次々に失われ、景気の悪化で暮らしに困窮する人も続出している。そうした状況は、憲法が保障する基本的人権や生存権を揺るがしているにほかならないからだ。
今年は日本国憲法の公布(1946年11月3日)から75年の節目に当たる。戦後日本の繁栄の礎となった憲法が今、どこまで生かされているのか。国政の現実を改めて見据えたい。
■広がる弱者の困窮
「年越し食堂」「たすけあい村」「なんでも相談会」-この年末年始、首都圏を中心にこんな場所が各地に設けられた。生活困窮者に食事や宿を提供したり行政の相談窓口を紹介したりする市民団体の支援活動だ。
多くの会場に列ができ、貧困に突然直面した若い世代の姿もあった。東京では昨年11月、バス停で寝泊まりしていた女性が殴られ死亡する事件が起き、衝撃が広がった。派遣労働者だった女性は仕事が減って収入を断たれ、住む家を失っていた。
コロナ不況による解雇や雇い止めは、政府が把握しただけで約8万人に上り、実数はさらに多いとみられる。多くは非正規で働く人々だ。自治体の自立支援窓口に寄せられる相談も2020年度上半期は約39万件と前年度同期の3倍に達している。
ひとり親世帯の困窮、学生の就職難、若者の自殺増加も報じられている。政府はさまざまな施策を打ち出してはいるものの、事態のしわ寄せは弱者に集中する。コロナ禍は格差の固定化やセーフティーネットの機能不全といった憲法の理念と相いれない現実が、日本社会に横たわることをあぶり出している。
憂慮すべきはそうした中、永田町では改憲の必要性だけがいまだ叫ばれ、憲法の本来的意義やそれを国政に反映させる議論が軽んじられていることだ。
■増幅する政治不信
自民党の改憲案は、安倍晋三前首相が提唱した9条への自衛隊の存在明記、参院選の合区解消、緊急事態条項などの4項目だ。いずれも今なぜ必要か説得力に乏しい。改憲発議の前提として欠かせない国民の幅広い支持や理解は広がっていない。
9条改正に関しては「条文の趣旨や自衛隊の実態は変わらない」との曖昧な説明が繰り返されている。他の項目も既存の法律の見直しなどで対処できる内容であり、全体として「改憲ありき」の印象が拭えない。
政治の優先課題を問う世論調査では毎回、景気・雇用対策や医療・福祉の充実を望む回答が大多数を占める。コロナ禍が拡大した今、その声は切実さを増している。安倍路線を継承するという菅義偉政権はこうした現実にこそ目を凝らすべきだ。
そもそも国会議員を含む公務員は「全体の奉仕者」であり、憲法を擁護する義務を負う。国会の基本的役割は、憲法を物差しにして国政を監視し、国民の生命、財産を守るために法律の制定や改廃を進めることだ。
ところが今回、政府のコロナ対策が迷走する中、その根幹である特別措置法の見直しは大きく遅れた。さらに昨年は「桜を見る会」を巡る前首相の虚偽答弁、元農相の収賄疑惑、参院選での大掛かりな買収事件など政治家の不祥事が続発した。官僚らが政権の意向にひたすらなびく「忖度(そんたく)」の風潮も続き、国民の政治不信は増幅している。
菅首相は年頭の記者会見で、コロナ制圧をはじめとした政治課題を列挙し、「国民のために働く内閣」という政権のキャッチフレーズを改めてアピールした。それは言うまでもなく立憲政治の原点であり、憲法の崇高な理念を生かした国政運営を実践してこそ、初めて成り立つ。(引用ここまで)