アンダンテのだんだんと日記

ごたごたした生活の中から、ひとつずつ「いいこと」を探して、だんだんと優雅な生活を目指す日記

井上ひさし「偽原始人」の中学受験

2019年06月13日 | 生活
というわけで、古い本を読んでは「ときめく/ときめかない」の判断をしているのですが、その中で「ときめかない(捨てる)」の判断をした本というのも、昔は「ときめいた」本だったわけで(だから長々と所有していた)、だから感謝してお別れを。

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偽原始人」(井上ひさし)

これは小学生男子三人がつるんで、子供の人権や幸せを侵害する大人に対する反発から数々の悪事をはたらく話。悪知恵がはたらく様子、闘いぶりは「ぼくらの七日間戦争」的でもあるんだけど、なんというか、悪事があまりにもシャレにならないし、本人たちの幸せな生活につながる建設的悪事(というのも変だが)にもなってないので後味が悪い。

とはいえ、いろんな奇想天外な発想やら、言葉遊びやら、ぎっしり出てきて息つく暇もなく、読んでいる間はおもしろい。

いろんなシチュエーションが古すぎるので、たとえば「白い巨塔」のように現代に置き換えてドラマを作ったりすることは不可能だろう。(昭和51年刊行の小説)

この話の発端は、彼らが無理やり(中学)受験勉強をさせられているところで、なにしろ主人公は名前が「東大(とうしん)」。これはどうしても子供に東大いってほしいと思った親心で名付けられたものだから、子供への愛のほとばしり、上滑りという感じ。勉強して、いい学校に行くことが子供の人生の幸せだと信じて疑わないところが話のベースになっていて、これは当時の新しい立身出世パラダイムだったんですね。昭和51年といったら、私が小学生のころです。

塾というものがあったり、プリント学習というものがあったり、そのへん、21世紀の今もそんなに違わないかもしれないけれど、勉強のさせ方はだいぶ違います。

スパルタの家庭教師が来ると、親公認で体罰しながらビシバシ教え込んでいますしね(^^;;
(今さすがに小説でもそんなの流行らない)

そしてまたその家庭教師の教え方というのが、「水質検査は次のように行う(1)色の調べ方 水をガラスのつつに入れて…(略)(5)塩分の調べ方 水を試験管にとり、これにうすい硝酸を一、二滴加えて、水を酸性にする。この水に硝酸銀の水溶液を加えると…」という具合にひたすら三時間しゃべり続けて一言一句ノートに書きとらせ、それを次の日までに暗記させるというやり方。

もちろんこれは小説で、別に当時の中学受験の実態を表しているわけではないんだけれど、やはり今よりずっと素直に、暗記することや、長時間勉強することや、そういうことを「無理やり」させることに意味があると思われていたことの反映かもしれません。

描かれている中学受験勉強というものはひたすらに薄っぺらく、それに対抗する悪だくみは本当に生き生きしていて天才的。家庭教師を出し抜くための暗号作成とか、とても面白いんだけれど。

結局、大人たちはそれだけ本気の抵抗を受けながらも、最後まで変わらず、何がまずかったのかの反省もしないんですよね。せっかく(?)これだけ大掛かりないたずらを受けながらも何も変わらない。そして最後は子供たちが万策尽きて「キチガイのふり」で抵抗しているところで終わるんだけど、誰もなんにも幸せにならないの。この後味の悪さが致命的かな…

考えてみれば、「モッキンポット師の後始末」とかもほんとシャレにならないレベルのいたずらで満ちているんだけど、要するに井上ひさしの実体験がかなりそういうのに近いのかしらん。今読むとあまりひかれない。

…しかしこの調子で、読み返しては判断していたら本棚が片付くのはいつの話か…いや増えるほうが速いだろうどう考えても…

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