今日、mixiニュースにあったのでたまたま(妊娠の予定もないのにw)読んだのですが、日本産婦人科感染症学会が、「女性のみなさまへ 新型コロナウイルスワクチン(mRNAワクチン) Q & A」というのを出しています。
←ソースにあたれ(しかし暇でなくちゃできない)
かなり詳しく、かつ慎重に言葉を選んでまとめられていて、根拠とした文献もきちんと示してありました。
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Q2: 妊娠中の⼥性は mRNA ワクチンを接種しても⼤丈夫でしょうか?流産することはありますか?
アメリカで新型コロナウイルスワクチン(mRNA ワクチン)の接種を受けた 35,691 ⼈の妊婦さんについての調査によると、発熱や倦怠感などの副反応の頻度は妊娠していない⼥性と同程度でした。また、ワクチンを接種した後に妊娠を完了した 827⼈のデータによると、流産、早産、胎児の発育遅延、先天奇形、新⽣児死亡が起きる確率は、ワクチンを接種していない妊婦さんと変わりませんでした[3]。
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ここで参照されている[3]というのは
Preliminary Findings of mRNA Covid-19 Vaccine Safety in Pregnant Persons
(日本語アブストラクト:
妊娠女性における mRNA Covid-19 ワクチンの安全性に関する予備的知見)
です。私、たまたまというか、この論文を読んだことがあったのですが、それは先日、「妊娠初期にmRNAワクチン接種した人の8割以上が流産した」(o_o)という趣旨で引用された場面を見たからでした。いくらなんでもそんなことあるの!? ってんで元の論文を読みに行ったところ…
それは確かにその論文の数字をもとにした言説だったのですが、前提が間違っていたのでした。
(赤はアンダンテによる)
これは上記論文中にある表ですが、流産・早産その他の生じた率が通常の率より多くなっていないかを検討したものです。これによると、827例のうち104例が流産(20週未満)であり、これは通常観察される流産率の範囲にあります。しかし表の下に細かい字で気になる注釈があり、827例のうち700例はワクチン一回目接種が「第三期」だったというのです。つまり…第三期(28週~)になってから打ったということは、そもそも20週までの流産はしなかった人ってことだから…残りは
127例 第二期までに一回目接種 → 104例の流産(81.9%)
という計算ができるわけです。これってどういうこと!?
しかしそれは、割り算としては正しくても、827人という集団がどういう性質のものであるかを無視した意味のない計算なのです。そもそもワクチン自体ができたのが最近で、この論文も「急ぎ」でまとめられた報告なので(タイトルにPreliminary Findingsとあるように)、妊娠の「結果(流産か早産か正期産か)」が既に出ているという条件で集めた827人を対象としたこの調査では、妊娠の早い時期に接種をした人の場合、流産した人くらいでないとほとんどこの集団に入ってないということなのです。わかりにくい!!
わかりにくいというか、そもそも流産(20週未満)しなかったことが確定の、第三期になってから打った人を母数に入れて流産率計算してどうするのよ、という気もするのでこの論文もちょっとどうかとは思うのですが。
もちろん、妊娠の早期に接種をした人がどうなったか、多くの結果が出てから論文をまとめればより確かな(そしてわかりやすい)結果が得られるわけですが、多くの人が、「妊娠中、打っていいの? ダメなの??」と気を揉んでいる現状では、急いでとりあえずの報告を出す意味も多いにあるということでしょう。
私が先日見たYoutubeは、お医者さんがやってるチャンネルでしたが、その人は元の論文を読まず、上記の計算をして書かれたネット記事のみを読んで紹介した模様です。
私を含む数人が、これ違うんじゃない? というのをコメントしたら(そのせいかどうかわかりませんが)その動画は削除され、現在では新しく修正した動画がアップされています(アクセス数に貢献したくないのでリンクは貼りません)。
結局、誰も特に悪意(だましてやろうとか)がなくても、論文を誤読して記事を書き、それを読んだ人が(また善意で)拡散し…そうしたころには元記事が削除されていても、もうあちこちに「~らしいよ」が広まったあとです。引用元が真面目な論文なところがなお厄介です。
元記事は削除されたのかさっき検索しても見つかりませんでしたが(動画を最初に見たときはあった)、それに対するファクトチェック記事がありました。
まさにデマ発生の源泉を見たという感じです。やれやれ…医者なら元論文確認してから動画作らんかい!!
とにもかくにも、「ソース」を確認する習慣は大事です。しかしよほどの暇人でなければそんなことしてらんないのも事実で。
一方、この論文では、「妊娠早期に接種しても安全ですよ」ということを言っているというわけでもないのです。なにしろ、早め接種の妊婦さんがあらかたまだ出産までこぎつけてない段階で取り急ぎまとめているのですから。でも、特に流産率が高くなるとすれば、母集団(第二期までにワクチン接種した1132人)からもっとたくさんの人が調査期間内に「結果(流産)」が出て、827人の集団のほうに取り込まれていたはずと考えると、まぁ少なくともそんなにひどくはなさそうだ、ということはいえそうです(期間内に何週まで来たかがバラバラなので集計しにくいが)。
この報告を元にしたこんな記事がありました:
新型コロナワクチンの長期的な安全性への懸念は?
「女性不妊になる根拠はないと河野大臣も述べられていますし、mRNAワクチンを接種した約4000人の妊婦さんの安全性に関する報告では、特に先天奇形や早産・流産が増えるといったこともなさそうです。」
ここでいう報告というのが、上記論文のことです(リンクされています)。「特に~なさそうです。」とぼかした表現をしつつ、その曖昧な印象を強化すべく河野大臣を引き合いに出す(?)という技を使っています。慎重な表現ですね。上記の日本産婦人科感染症学会Q&Aでは、それよりもっと言い切っているようにみえますが、「ワクチンを接種した後に妊娠を完了した 827⼈のデータによると、」というところで「保険」をかけています。
無条件に「安全」をいうような人は、それはそれで信用できません…
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かなり詳しく、かつ慎重に言葉を選んでまとめられていて、根拠とした文献もきちんと示してありました。
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Q2: 妊娠中の⼥性は mRNA ワクチンを接種しても⼤丈夫でしょうか?流産することはありますか?
アメリカで新型コロナウイルスワクチン(mRNA ワクチン)の接種を受けた 35,691 ⼈の妊婦さんについての調査によると、発熱や倦怠感などの副反応の頻度は妊娠していない⼥性と同程度でした。また、ワクチンを接種した後に妊娠を完了した 827⼈のデータによると、流産、早産、胎児の発育遅延、先天奇形、新⽣児死亡が起きる確率は、ワクチンを接種していない妊婦さんと変わりませんでした[3]。
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ここで参照されている[3]というのは
Preliminary Findings of mRNA Covid-19 Vaccine Safety in Pregnant Persons
(日本語アブストラクト:
妊娠女性における mRNA Covid-19 ワクチンの安全性に関する予備的知見)
です。私、たまたまというか、この論文を読んだことがあったのですが、それは先日、「妊娠初期にmRNAワクチン接種した人の8割以上が流産した」(o_o)という趣旨で引用された場面を見たからでした。いくらなんでもそんなことあるの!? ってんで元の論文を読みに行ったところ…
それは確かにその論文の数字をもとにした言説だったのですが、前提が間違っていたのでした。
(赤はアンダンテによる)
これは上記論文中にある表ですが、流産・早産その他の生じた率が通常の率より多くなっていないかを検討したものです。これによると、827例のうち104例が流産(20週未満)であり、これは通常観察される流産率の範囲にあります。しかし表の下に細かい字で気になる注釈があり、827例のうち700例はワクチン一回目接種が「第三期」だったというのです。つまり…第三期(28週~)になってから打ったということは、そもそも20週までの流産はしなかった人ってことだから…残りは
127例 第二期までに一回目接種 → 104例の流産(81.9%)
という計算ができるわけです。これってどういうこと!?
しかしそれは、割り算としては正しくても、827人という集団がどういう性質のものであるかを無視した意味のない計算なのです。そもそもワクチン自体ができたのが最近で、この論文も「急ぎ」でまとめられた報告なので(タイトルにPreliminary Findingsとあるように)、妊娠の「結果(流産か早産か正期産か)」が既に出ているという条件で集めた827人を対象としたこの調査では、妊娠の早い時期に接種をした人の場合、流産した人くらいでないとほとんどこの集団に入ってないということなのです。わかりにくい!!
わかりにくいというか、そもそも流産(20週未満)しなかったことが確定の、第三期になってから打った人を母数に入れて流産率計算してどうするのよ、という気もするのでこの論文もちょっとどうかとは思うのですが。
もちろん、妊娠の早期に接種をした人がどうなったか、多くの結果が出てから論文をまとめればより確かな(そしてわかりやすい)結果が得られるわけですが、多くの人が、「妊娠中、打っていいの? ダメなの??」と気を揉んでいる現状では、急いでとりあえずの報告を出す意味も多いにあるということでしょう。
私が先日見たYoutubeは、お医者さんがやってるチャンネルでしたが、その人は元の論文を読まず、上記の計算をして書かれたネット記事のみを読んで紹介した模様です。
私を含む数人が、これ違うんじゃない? というのをコメントしたら(そのせいかどうかわかりませんが)その動画は削除され、現在では新しく修正した動画がアップされています(アクセス数に貢献したくないのでリンクは貼りません)。
結局、誰も特に悪意(だましてやろうとか)がなくても、論文を誤読して記事を書き、それを読んだ人が(また善意で)拡散し…そうしたころには元記事が削除されていても、もうあちこちに「~らしいよ」が広まったあとです。引用元が真面目な論文なところがなお厄介です。
元記事は削除されたのかさっき検索しても見つかりませんでしたが(動画を最初に見たときはあった)、それに対するファクトチェック記事がありました。
まさにデマ発生の源泉を見たという感じです。やれやれ…医者なら元論文確認してから動画作らんかい!!
とにもかくにも、「ソース」を確認する習慣は大事です。しかしよほどの暇人でなければそんなことしてらんないのも事実で。
一方、この論文では、「妊娠早期に接種しても安全ですよ」ということを言っているというわけでもないのです。なにしろ、早め接種の妊婦さんがあらかたまだ出産までこぎつけてない段階で取り急ぎまとめているのですから。でも、特に流産率が高くなるとすれば、母集団(第二期までにワクチン接種した1132人)からもっとたくさんの人が調査期間内に「結果(流産)」が出て、827人の集団のほうに取り込まれていたはずと考えると、まぁ少なくともそんなにひどくはなさそうだ、ということはいえそうです(期間内に何週まで来たかがバラバラなので集計しにくいが)。
この報告を元にしたこんな記事がありました:
新型コロナワクチンの長期的な安全性への懸念は?
「女性不妊になる根拠はないと河野大臣も述べられていますし、mRNAワクチンを接種した約4000人の妊婦さんの安全性に関する報告では、特に先天奇形や早産・流産が増えるといったこともなさそうです。」
ここでいう報告というのが、上記論文のことです(リンクされています)。「特に~なさそうです。」とぼかした表現をしつつ、その曖昧な印象を強化すべく河野大臣を引き合いに出す(?)という技を使っています。慎重な表現ですね。上記の日本産婦人科感染症学会Q&Aでは、それよりもっと言い切っているようにみえますが、「ワクチンを接種した後に妊娠を完了した 827⼈のデータによると、」というところで「保険」をかけています。
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