カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

骨董品に関する物語・古い印章

2018-12-06 20:26:43 | 突発お題

 皆に慕われる優しい先生は村で一人きりのお医者さんで、薬の入った袋はいつも蝋で捺印されていた。だからあの日、先生の出した薬を飲んだ村人が幾人も亡くなった頃、同じ薬を飲んで「生か死か」と紙に書き遺した先生が死んでしまっていた理由を知っている人がいたら是非教えて欲しい。
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作品その93・酸いも甘いも

2018-12-06 19:57:23 | 見習い錬金術師の作品
たかあきは『まがい賢者の石』と『空猫の髭』を材料に『氷結の苦味飴玉』を錬成しました。用途は飲用です。

 結局アカデミーを次席で卒業した師匠は、同じく首席で卒業した彼女や教授連の誘いを蹴って、たまたま訪れた王都で師匠の作品を気に入った老貴族をパトロンとして田舎の荘園に引っ込んだ。やがて身寄りのなかった老貴族の遺産を受け継いだ頃、師匠はアカデミーを辞して工房を開いた彼と彼女が事故死したと知った。
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骨董品に関する物語・懐中時計の鎖飾りの封蝋

2018-12-06 19:45:07 | 突発お題

 はじめに蝋封を見たのは昔の調印書類を展示した博物館で、紙に散った蝋の跡を不思議がった私に彼があれは封緘だよ、あの蝋を崩さないと中身を読めないんだと教えてくれた。だから私は未だに彼から最後に渡された手紙に捺印された蝋封を崩さず、その言葉と心から目を背け続ける。
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