カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

第八景・散る桜花は物哀しく

2018-12-26 21:27:34 | 桜百景
たかあきは、突風の哀しみと桜の狭間に関わるお話を語ってください。

 突然の強い風が音を立てて吹く中、まだ十分に美しい姿のまま、それでも散り急ぎながら宙を舞う桜の花弁は物哀しい。その美しさの先には泥土にまみれて腐り果てる未来しか残されていないのも、これだけ可憐な外見をした花弁が人間の顔にぶち当たると意外なまでに痛みを伝えてくるのも、全てが物哀しい。
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骨董品に関する物語・グランヴィルの「花の幻想」から、ハニーサックル

2018-12-26 21:10:05 | 突発お題

 まだ近所に空き地や緑が沢山あった頃、花の蜜や木の実は学校帰りの良いおやつだった。細長い花弁を摘んで吸うと甘い蜜の味がするからスイカズラだよと図鑑で読みたての知識を妹に披露した日は遠くなったが、代わりに今は自宅庭のスイカズラの花で甘いお酒を作るのが毎年の恒例だ。
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骨董品に関する物語・グランヴィル「花の幻想」から「花の帰還」

2018-12-26 21:04:18 | 突発お題

 彼は世界の果てまで辿り着いた者の魂を天に還すのが仕事だった。ある日、彼の住む荒野に辿り着いた者が落とした土と種から緑が芽吹き、彼はそれを大切に育てた。やがて芽吹いた緑は花を咲かせ種が実り、やがて荒野は様々な花の溢れる緑野となった。その元々は荒地だった緑野を、生者は彼岸と呼ぶ。
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骨董品に関する物語・天使の印章

2018-12-26 21:00:36 | 突発お題

 長年天使の美術品を蒐集していた叔父が蒐集品の殆どを手放すというので最後に見せて貰いに行ったら、記念にと小さな印章をくれた。使い方は紙に蝋を垂らして捺印すればいいと実演してみせた叔父に蒐集品を手放す理由を尋ねると、実は天使の正体が古い空気だと気付いたからなんだと愉快そうに笑った。だから、少しばかり蒐集品の重みを軽くしてみることにしたのだと。
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