カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

第四景・冬の桜樹

2018-12-22 16:15:14 | 桜百景
たかあきは、宵闇の学校と桜の幹に関わるお話を語ってください。

 旧校舎が移転することなり、校庭の片隅にある大きな桜樹はどうなるのだろうと、ふと思った。冬休み直前の既に落葉が終わった樹は誰にも顧みられないまま寂しげに佇んでいるように見えたが、私には何もできなかった。やがて校舎跡は校庭も含めて宅地になったが、あの日の私の傲慢な憐みなど何の意味もなかったかのように。桜樹は切られもせず現在もそこに在る。
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骨董品に関する物語・天文古書「Der Himmel(天空)

2018-12-22 15:20:23 | 突発お題

 あの日の晩に星を眺めながら、ただ美しいばかりだった空の星々を辿って神話や伝説を思い描き、後には世界の理を見出した時、人間は獣であることを自らの意思で止めて人間となったのだ。だから決して学ぶのを止めてはいけないよと父は私に言い、傍らにいた母も頷いてみせた。
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骨董品に関する物語・グランヴィル「花の幻想」から、プリムラとスノードロップ

2018-12-22 15:18:31 | 突発お題

 子どもの頃「森は生きている」という童話で読んだ雪割草の姿が挿絵に描かれていなかったので、一体どんな花だろうと思いを巡らせ、実物の姿に愕然としたことがある。桜草のように一般的な「花」という姿をしていないその白い花弁の美しさに気付いたのは随分と大人になってからだ。
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骨董品に関する物語・グランヴィル「花の幻想」から、チューリップ

2018-12-22 15:14:27 | 突発お題

 中世イスラムにおいてチューリップは神の花と呼ばれていた。図録を見る限りでは花弁が針のように尖った現在百合咲きと呼ばれる形に似ているが、実はその時代の品種は失われて久しい。そして17世紀オランダで再び人々を熱狂させ、美の女神に例えられたゼンペル・アウグストゥスも既に存在しない。
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骨董品に関する物語・ガラスの香水瓶箱

2018-12-22 15:12:52 | 突発お題

 おとぎ話にあるような媚薬って実在しないのと尋ねてきた彼女に、ムスク(麝香)は割と近くないかな、一説には雄鹿が雌を引き寄せるフェロモンと呼ばれているしと答えたら、実は知らずにムスクの香水を昼間から付けていたと青くなっていた。それなら効果はないねとは言わなかった。
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