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カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

第一景・故郷の桜

2018-12-18 21:21:50 | 桜百景
たかあきは、悪夢の故郷と桜の花に関わるお話を語ってください。

 薄紅に重なり合った桜が描かれた母からの絵葉書には、僕にとっては楽しい思い出など何ひとつない故郷で、更に辛いことしか思い出せない校舎の桜並木が今年も見事に咲き揃ったと書き添えられていた。桜の木の下には死骸が埋まっているというが、あの桜はきっと今も、学び舎に通う生徒の悲しみと痛みから流れ出した血と涙を吸い上げながら咲き誇るのだろう。
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骨董品に関する物語・星の本

2018-12-18 20:40:05 | 突発お題

 僕が空の星を好きだと言うと、お祖父ちゃんは、
「星なんか眺めていても腹は膨れんぞ」
 などと、道化た調子で父さんの口癖を真似てから、寂しそうに、
「あいつも昔は星が好きだったが、自分の足元を見続けているうちにそれを忘れたらしいと呟いてから、お前は覚えていられるかな」
 と言って、一冊の本をくれた。
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骨董品に関する物語・青いベルベットの祈祷書

2018-12-18 20:37:26 | 突発お題

 己の寿命を悟った彼女は、異教徒である僕に形見として立派な祈祷書を渡してきた。同じ神を信じる人が貰った方が喜ぶだろうし、貴女の勧めであろうと改宗する気はないと一度は断る僕に、私は自分が知る美しいものを貴方に見せたいだけなのよと再び差し出してきた祈祷書を、僕は無言で受け取るしかなかった。
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