お洒落な伯母は昔からストールやマフラー、それにマントなど丈の長い羽織物を器用に着こなしていた。私も真似したことがあるが、ああいう格好は布の裾を上手く捌けないと危険だし、何よりだらしない。だが、私が凄いと褒める言葉に叔母は隠す必要ががあるのよと寂しそうに微笑むだけだった。
お洒落な伯母は昔からストールやマフラー、それにマントなど丈の長い羽織物を器用に着こなしていた。私も真似したことがあるが、ああいう格好は布の裾を上手く捌けないと危険だし、何よりだらしない。だが、私が凄いと褒める言葉に叔母は隠す必要ががあるのよと寂しそうに微笑むだけだった。
フランス国旗の赤と白と青って自由、平等、博愛を意味するそうだけど、床屋の店先で回るねじり棒も同じ色だよね。あっちはギリシャ時代に医者を兼ねていた床屋の看板だけど動脈と包帯、それに静脈の色なんだって。想像すると何だか物騒でワクワクしてこない?」
「お前少し黙れ」
紐にぶら下がった格好で向かい合い、クルクルと回り続ける古いダンス人形を見ていたら、妻を鶏に変えられた男の話を思い出した。男は悪魔に自分も鶏に変えてくれと頼んで叶えられ、夫婦は幸せに暮らしたそうだが、全く幸せというのは他人の手に届かないところに存在するものだ。
ルルド巡礼から帰った友人に、ルルドには泉の奇跡を受けた人々が置いて行った松葉杖や車椅子が沢山残されているそうだが、流石に手足が生えた人間の話は聞かないなと嫌な笑顔で吐き捨てた皮肉屋に、友人は穏やかな表情で土産物のペンダントを示しながら無言で微笑み、俺は皮肉屋が気の毒になった。