骨董品に関する物語・モーブ色のロザリオとロザリオケース

　昔から大好きだった親戚のお兄さんは、私が産まれる前から己の生涯を神への奉仕に捧げることを誓っていた。だから私がお嫁さんになりたいと懇願しても困ったように笑うだけだった。やがて司祭となったお兄さんは私に優しげな紫色をしたケースに入ったロザリオをくれたが、それはお兄さんが俗世から距離を置く宣誓でもあった。

第二十九景・人間は「じんかん（人生の意）」で、塞翁は塞爺さん

たかあきは、雨の初恋と桜の根に関わるお話を語ってください。

　子供っぽい初恋が破れて雨のように涙を流した日、彼は「人間万事塞翁が馬って言うだろ、それに風が吹けば桶屋が儲かるものだから、今泣いた涙だって、そのうち綺麗な花を咲かせるさ」などと、言っている事は判らないが慰めている事だけは判る言葉を掛けてきた。確かにその時、この男が私の未来の夫になるとは露ほどにも思わなかった。