昔から両親は僕に対して殆ど興味を持っていなかった。虐待もされず相応に手をかけて貰ったことは認めるが、それは親としての義務を果たしているだけだと思っていた。そんなある日、桜餅を頬張った直後、桜餅が好きだった今は写真すら残っていない双子の兄が僕の目の前で車に轢かれたのを思い出した。
昔から両親は僕に対して殆ど興味を持っていなかった。虐待もされず相応に手をかけて貰ったことは認めるが、それは親としての義務を果たしているだけだと思っていた。そんなある日、桜餅を頬張った直後、桜餅が好きだった今は写真すら残っていない双子の兄が僕の目の前で車に轢かれたのを思い出した。
姉が劇場の観客席で変死したと聞いても私は驚かなかった。観劇が趣味だと自称していた姉は、実は出所の知れないオペラグラスを通して見える、廃墟と化した舞台で演技を続ける骸骨を見るのが何より楽しみだった。だから姉は「其処」でとうとう人間が見てはならないものを見たのだ。