カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

骨董品に関する物語・紫のマラカイト硝子

2019-02-04 20:12:28 | 突発お題

 硝子の細工や器は砕け散る時、その生涯で一度だけ悲鳴を上げると奴は言った。それは悲鳴と称する以外に無い悲痛で耐えがたいものが殆どだが、奴がまだ未熟だった頃、趣味で作るトンボ玉を加熱し過ぎて砕いてしまった時の軽く澄んだ音は哀しさを含んだ天上の楽のようだったと言う。
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骨董品に関する物語・ソード型のブックマーク

2019-02-04 20:11:23 | 突発お題

 トランプのスペードは剣、そして剣を振るう貴族を意味する。剣は権力、即ち力であり、智を以て振るわれない剣は即座に世界を滅ぼす。だからこの栞は力が智と共に在るようにとの戒めなのだと祖父は言ったが、そんな祖父はトランプで言うならダイヤの硬貨を手にした商人だったりする。
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骨董品に関する物語・葡萄色のグラス

2019-02-04 20:09:11 | 突発お題

 彼がいつもの器に注いで出してくれる葡萄酒はラベルの無い瓶に入っていて、どんな名店でも味わえないほどの美酒だったが、彼は決してその葡萄酒の出所を明かそうとはしなかった。思い余った俺は彼の家から葡萄酒の瓶を盗んで持ち帰ったが、そこに入っていたのは只の葡萄液だった。
 
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第三十景・小さかった魔女の話

2019-02-04 20:06:32 | 桜百景
たかあきは、初春の哀しみと桜の下に関わるお話を語ってください。

 トランプ占いをするのが流行っていた時、良く当たるからと占いを頼まれることがあった。その日は仲良し二人組から中学校になっても同じクラスになれるかと聞かれ、別のクラスで別の友達を見付けると正直に話したら窓からトランプを投げ捨てられて桜の樹上にばらまかれ、結局何枚かはどれだけ捜しても見付からなかった。
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