ふみさんの日々雑感

生活の事、家族の事、大好きなサッカーの事・・・日々いろいろ

文庫「クライマーズ・ハイ」横山秀夫著

2006-09-19 22:23:36 | 映画・ドラマ・小説・マンガ
本屋で平積みされていた。題名を見た時は登山関係の本だと思い手に取る事はなかった。新聞でこの本の書評を読み、あの御巣鷹山の墜落事故にかかわった新聞記者の本らしいと知り、本屋で手に取る。あの日航ジャンボ機の事故を新聞の報道の面から取り上げた本である。

読み始めてから終わるまで、それこそ一気に読んだ。どのように記事が集められ、編集されて新聞に載るか、あの事故の日々をもう一度追体験するような気がした。

本当に大変な事故だった。日航機の行方が分からなかった時、私達家族は東京から新潟へ向けて、お盆の帰省で三国峠を越えていた。あの頃は関越自動車道も無く、車もオートマチック車ではないので、渋滞のろのろ運転の山越えは夫と交代でも大変だった。実家に着いた時に「三国峠の山の中にジャンボ機が墜落したみたいだよ」と聞き「えーー!今通ってきたよ。どうして?」と言ったのを覚えている。

生き残った女性達が(女性だけ!)ヘリコプターに吊り下げられたシーンは昨日の事のように覚えている。もう、お盆はそっちのけでTVに噛り付いていた。

育ちにも、子供達にも、新聞社にも、人間関係にも、人生にも、諸々の鬱屈を抱えた主人公。群馬の地方新聞社に勤める彼は日航機事故の「全権デスク」を任された。彼の勤める新聞社も権力争いや部門間の軋轢、そして凄まじい男の嫉妬が渦巻く。

過労のためにクモ幕下出血して植物人間になった同僚の友人。彼と谷川岳の衝立岩に登る約束の日に友人は倒れ、日航機が墜落した。その17年後、その衝立岩を無き友人を忍びその息子と昇る。この二つの時間軸が平行して紡がれていく。

人の命には、大きい命と小さい命がある。重い命と、軽い命。大切な命とそうでない命。「日航機でなくなった方たちは、マスコミの人にとってはすごく大切な命なんですね」と主人公を攻める彩子。私は、9・11の命と、イラク空爆で死んでいった女性や子供の命を思った。

友人を見舞いに行った時、病院の長椅子に座って、テレビを見ていた老婆。そこには棺の並ぶ体育館が映され、泣いている遺族達。老婆はつぶやく「あんなに泣いてもらえればね・・・」老婆には自分が死んでもあれほど悲しんでくれる人がいないのを知っている。

主人公は言う。「俺は“新聞”を作りたいんだ。“新聞紙”を作るのはもう真っ平だ。だから、この投稿をのせる」と。

最後の一行まで胸が一杯になる小説だった。夫にも子供達にも読ませたい
コメント (2)
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