初日
なぜか初日に行ってしまった。
東京ミッドタウン西側から
Photo 2007.3.30
桜が咲いている階段の写真を撮りに六本木に行ったら、東京ミッドタウンへ沢山の人が向かっていた。わざわざ混雑するオープン初日に行かなくてもいいやと思っていたので、最初は入ってみるつもりは全然なかった。だが、歩いていたら近づいてしまったので、ついでにちょっとだけ冷やかしてみることに。 なんでもいいけど、おおきいなあ、やっぱり。
ビッグ・キャノピー
ビッグ・キャノピーと名付けられた大屋根もなかなか魅力的な空間。同様の空間はあちこちにあるが、ここの柱は樹木のように枝分かれしながら屋根を支えていて格好いい。でもその上の屋根部分のフレームは、ちょっとグチャグチャしていて、ややスッキリしない感じ。
ガレリア内の吹き抜け
意匠デザインとかインテリアデザインの専門家じゃないので、細かいところは分からないが、内観も外観も全体に比較的上品な印象。
素人の一見の比較だが、六本木ヒルズと東京ミッドタウンを較べてみると、前者はどちらかというと攻めの形で大胆な造形で、ちょっと濃いというかバタくさい気がする。これに対して後者は、繊細であっさりしている。
六本木ヒルズは、外観がメタリックで、鎧兜をモチーフにしたとも言われる。平面形も楕円形で、超高層ビルとしてなかなか斬新な形をしていて、ややアクが強く、建設当初は目を惹いた。だがよく見ると、意外に大雑把なデザインだなと思われるところも。
プラザ
一方、東京ミッドタウンの建物群は、それほど斬新で新しい形をしているようには見えない。流行のルーバーを用いていたりはするのだが、どちらかというとシンプルで、瀟洒なガラス張りの四角い建物。ビッグキャノピーのデザインは比較的大胆だが、他の部分は手堅い。高さは東京一だそうだが、さほど個性的な形ではないので、普通の人では他の建物と見分けがつかないのではないかと思う。でも細かいところのデザインの一つ一つが洗練されていて上品な感じ。
ただ、高層棟上部のホテル部分のガラスが、斜めになってたり、波打っているようなのだが、施工ミスかと思ってしまうほど、小さなデザインで、あれは意味があるのだろうか? 正直言って、繊細すぎて印象が弱い。
どちらのデザインが好みかは人によって分かれると思う。乱暴な言い方をすれば、六本木ヒルズは男性的でステーキ味、東京ミッドタウンは女性的で和食、かな?
さて、見た目のデザイン以外の面で、気がついたことは、全体のプランニングの分かり易さについて。
東京ミッドタウンの全体レイアウトは、六本木ヒルズに較べると、かなりシンプルだ。外苑東通りを基準にして、これに直行ないしは平行するかたちで建物群が建てられている。わざと少し斜めに向けられているものもあるが、全体としては直行座標系の中に収まっている。芸がないと言えばそうなのだが、初めて来た人にも分かり易い。メインの超高層タワーを中心にして、通り側と公園側、六本木寄りと乃木坂寄り、というように、建物内に居てもおよその方向、位置感覚が知覚できる。
立体的な構造もシンプルだ。メインになるのは、地下鉄から繋がるB1F、通り沿いの1Fのみ。若干の地形的高低差があるので、B1は公園側で地上階になり、1Fは空中デッキとなるが、せいぜいその程度で分かりにくくはない。
10分も滞在すれば、全体の様子が把握できてしまうので、最初は、なぁんだ、こんなもんかとちょっとつまらなく思った。だが、分かりにくくて右往左往するよりは全然マシだなと、この後で、六本木ヒルズに行ってから思い直した。
六本木ヒルズの場合、やや深い谷があった場所を含んでいるので、立体的なフロア構成になっていて、実際かなり分かりにくい。また地形的な制約もあったのか、レイアウトも妙に複雑だ。そして楕円形のメインタワーの周囲にリング状に店舗が並んでいる。知人の多くも、何度行っても迷うと言っており、方向感覚や現在位置がかなり知覚しにくいプランである気がする。
プランナーは、迷路性が回遊性を生むなどと言っていたりするのだが、分かりにくさが嫌悪感に繋がると、リピーターは増えない。私は個人的には、六本木ヒルズの低層部プランは、成功とは言い難いのではないかと思っている。
もちろん、地元でしばしばここを使っている人は、慣れてしまっているので恐らくなんとも思わないだろう。関係者のための街ならそれでよい。だが、初めての人を含め、多くの人を外から呼び込もうとするには不利な形だと思う。
檜町公園の桜
先ほど地形的に複雑と書いたが、森ビルが手がけるヒルズの多くは、もともとは多くの住宅が密集する場所であることが多い。三井不動産が手がけた東京ミッドタウンは、一括して払い下げを受けた広大な土地で、昔から武家地などとして一体的だった場所。これに対して、六本木ヒルズやアークヒルズは、谷地を含み、小さな住宅が沢山集まっていた場所で、もともとは大型の再開発がしにくく、敬遠されていた場所である。森ビルは、三菱や三井のような昔から事業を行ってきた会社ではなく、後発だったため、敢えて他が手を付けない場所で開発を進めたとしばしば言われる。そのような経緯が、立地、更にはプランニングやデザイニングにもそれなりの影響を与えているのかもしれない。
六本木ヒルズは、建設の際に一つの谷を半分ぐらい埋め、そこに人工地盤を何層も架けている。アークヒルズも谷から丘にかけて人工地盤を造って造られた街だ。地形的な複雑さを逆手にとって、他にはない立体的な空間作りをしたいという意欲が、プランニングに現れ、面白い遊歩空間ができているのだが、初めて来た人には複雑すぎて分かりにくい。デザインの味がちょっと濃いのも、他にはない個性を求め、差別化を図った結果なのかも知れない。
ミッドタウンは単純なので、迷って遊び歩きたい人にとってはつまらないかも知れないし、一度来れば様子が分かってしまうので、飽きてしまうかも知れない。でもそれは空間に関してであって、コンテンツが魅力的ならば、人々は何度でも来てくれる。何度も訪れる空間には、妙な空間の複雑さは無用だと示している気もする。デザインが繊細であっさりしている気がするのも、無用な主張をしたくないのかなと思った。殊更に目を惹くデザインをせずとも、上品な感じがすればそれで良し、という感じ。
そのように考えてみると、なんだか、二つとも会社の考え方が現れてるのかもしれないなぁと、素人ながら思ったのでした。
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