西武新宿線の下落合駅近くで10年前に見た建物
謎の木造洋風建物
新宿区下落合1
Photo 1996.6.23
この建物は、階段調査を始めた頃、落合界隈を歩いていて見かけた。資材置き場のように使われていた敷地内に建っていた。気になって2枚だけ写真を撮ったのだが、この頃は階段調査の方に集中していて、この建物を再度見に行くことはなかった。
最近、昔の写真アルバムをひっくり返していて、また気になり始めたので、改めて行ってみたが、建物はいつのまにか解体されていた。撮影した時に、きちんと場所を記録しなかったので、下落合1丁目で駅のそば、たしか新目白通り沿いにあったという記憶しかない。
写真で見れば一目瞭然だが、とにかく怪しいところ満載の、謎の建物だった。なーんでそうなるかなぁ、という突っ込みどころ満載。
そもそも、なぜこの建物のまわりが資材置き場になっていたのかが不明。ほとんどゴミ置き場のような感じになっている中に、なぜこんな建物が・・・。
さて、この建物、用途は何だったのだろう? アパート、個人住宅、住宅併用事務所? どれも当てはまるが、どれも微妙に違う気がする。で、結局わからない。1Fは使っていたのだろうか? 物置? だいたいこの高さで1Fは使えるの? わからん・・・。
木造建物なのに、半円形の洋風アーチ。2Fの窓は全然洋風じゃない普通の横引き窓で、屋根も普通の瓦屋根なのに、なぜか1Fだけが洋風で、大振りなアーチの柱廊。でも普通の2階建ての下にアーチを造ったので、アーチの位置が異常に低く、アーチを支える柱部分も短い。柱間が異なるので、アーチの大きさも異なる。
円柱は青い細かいタイル貼り。柱頭部分はオーダーなどという気の利いたものではなく、よくわからない八角形の皿。しかもなぜか中央手前に見える柱頭だけ、異様に低い位置にある。アーチとの間に隙間が空いちゃってるじゃないか。土中に柱が打ち込まれて、柱頭が下がってしまったようにも見える。
建物は左方が解体されたのだろうか。ぶっつり切れていて、青いトタン壁があてられている。何らかの改築が行われたのは間違いないが、これがいいかげんで、角の部分は壁の断面がボロボロ見えている。だが、もし左方に部屋があったら見えないはずの、断面中央の柱にもタイルが貼ってある。なぜ? 前はどんな形だったんだろう?
右方の階段も結構大胆な造形だ。とってつけたようにドーンと階段が付いている。木造階段だが、手摺部分は全てモルタルで塗り込められている。そしてこの階段に架かる屋根を支える柱もタイル貼り。階段を上がった先は、すぐ横引きの扉で、玄関前スペースが全くない。ウーン、もしかすると全て自家設計、自家建設で造られた建物だったのかもしれない。
部分的に洋風なところがあるので、もともとはそれなりにハイカラな建物として建てられて使われていた時期があったはず。でも撮影時は、まるで打ち捨てられたように見え、そのギャップがかなり奇妙な雰囲気を醸し出していた。
青い壁面に掲げてある大きな広告看板状のものには「57年8月完成予定」と書いてあるのだが、何が完成するかはさっぱり解らない。まさかこの建物の完成予定日なんてことはないだろうし・・・。
57年というのはたぶん昭和57年(1982年)なのだろうが、撮影したのは平成8年(1996年)だったので、恐らくこの時点で既に過去の情報になっていたのだろう。完成予定であると書かれていた何かが完成したから、下の絵は消したのかもしれない。でもなぜか予定日の文字だけが残された。なぜそうなる?
後方には煙突が見えている。銭湯ではないようだが、ボイラーか何かの煙突だろうか? 今となっては、分からないことだらけだ。
アーチ部分だけを見ると、意外に魅力的だったりする。
Tokyo Lost Architecture #失われた建物 新宿区