ブエノアイレスのG20会議に出席した安倍晋三総理がプーチン.ロシア首相と個別に会い、日ロ平和条約締結交渉について新たに河野太郎外相とラブロフ外相を責任者とする話し合いの枠組みをつくることで一致した。これによって、来年1月に予定されている安倍総理のロシア訪問を前に、両国外相が話し合い、解決に向け加速度を増そうというものだ。
日ロ平和条約締結への動きについては、両国とも1956年の「日ソ共同宣言」を基礎にして行う点は合意しているが、引き渡された後の歯舞、色丹の主権でさえはっきりしない。交渉事だから秘密裏に行われているのは理解できるが、気になるのは、日本国内の国論である”四島一括返還”ではなく”歯舞、色丹二島返還プラスα”に向けての世論つくりへの動きだ。
安倍.プーチン首脳会談がった1日、東京では,元島民や北海道の自治関係者約500人が集まって都心をデモ行進した。デモの出動式には宮越光寛北方領土担当相も出席”領土交渉の本格的な時期が来た”と挨拶した。デモ隊のプラカードも”日露新時代を築こう”というものが多く、”国論の”四島一括返還”はなかった。毎年2月7日の「北方領土の日」の集まりとは違っていたという。
政府が平和条約締結に向けて世論づくりに入っているのだろうか。気になるのは河野太郎外相が交渉の表舞台に出てきたことだ。1956年の「日ソ共同宣言」交渉の時も祖父の一郎農相(当時)がフルフチョフ第一書記との間の交渉に当たっている。孫の太郎氏が祖父の一郎氏の後始末をするとはまさに歴史の皮肉である。