「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

保坂正康氏の偏狭な「大東亜戦争」観

2015-06-01 07:04:23 | Weblog
昨夜NHKラジオの第二の文化講演会で、昭和史研究家、保坂正康氏の「昭和史から学ぶ」を聞いた。保坂氏は講演では終始「太平洋戦争」という呼称を使用していた。「太平洋戦争」という呼び方は、戦後GHQの占領政策の一環として、なかば強制的に日本国内で使用されたものだが、すでに日本の社会では定着している。だから、僕は保坂氏が、これを使うからケシカランと腹を立てるほど偏狭ではない。

可笑しいのは「大東亜戦争」について”古い人が使うのは構わないが、若い人が使用するのは問題だ”といった意味の発言していた。”古い人”に属する僕だが、これは昭和史研究家としてはおかしいと思う。あえて「釈迦に説法」だが「大東亜戦争」という呼称は昭和16年12月12日、東條内閣が閣議決定したもので”支那事変を含む今次戦争”の正式呼称である。

これに対して「太平洋戦争」は、米国からみた戦域による呼称である。その戦域は米国西海岸からアラスカ、オーストラリアまでの太平洋の広い戦域だが「大東亜戦争」は、中国大陸からインド亜大陸、インド洋のアフリカ東海岸にまでに及んでいる。事実、インド洋のべンガル湾のアンダマン諸島には、海軍第12根拠地隊が敗戦まで、ここに陣地を置いていたし、緒戦にはセイロン(スリランカ)のコロンボまで空爆している。

”古い人”の僕から言わせれば、一般人向けの文化講演会といえども「大東亜戦争」という呼び方は内閣で閣議決定された正式呼称だが、戦後の連合軍の占領政策の結果、「太平洋戦争」の呼び方が、わが国では一般化されてきた経緯についても触れるべきである。歴史に忠実な”若い”研究家が「大東亜戦争」を語ってはいけない、というのは偏狭である。

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6 コメント

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よくわからない思考 (chobimame)
2015-06-01 09:12:00
今はわかりませんが、私が学生だった頃は、第二次世界対戦で習いました。
この戦争には3つの呼び名があります。
第二次世界対戦、太平洋戦争、大東亜戦争。
日本からみたら、大東亜戦争です。
その3つの呼び名の意味合いを知ることが大事であり、大東亜戦争と呼ぶことがけしからんなど、妙に左翼チックな思考で逆に違和感があります。
大東亜戦争と呼ぶのは右翼思考だ!などと言いたげで気持ち悪いです。
日本には、きちんと公平な目で戦争を語れる人が少なくなりました。
困ったものです。
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先の大戦 (wacin)
2015-06-01 10:35:00
小生は歴史の専門家ではないのですが、、、第二次世界大戦、大東亜戦争、太平洋戦争、それぞれ勃発の時期が違いますね。また国の立場の違い、米国から見れば「太平洋戦争」ですが、英国から見れば「大東亜」の方が相応しい? でも大東亜戦争というと、また中国、韓国が嫌がるようです。そこで政府は「先の大戦」と称しているようですね。個人的には、原爆その他、超大国アメリカの強力な軍事力に打ち負かされた印象が強いと「太平洋戦争」を使いたくなります。しかし地域、テーマによっては「大東亜」が相応しいケースも多いように思います。TPOで使い分けるしかないように思います。「先の大戦」では曖昧すぎます。
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それぞれの呼称 (kakek)
2015-06-01 12:13:05
chobimame さん
古い人なら「大東亜戦争」を使用してもよいという論理が理解できません。大東亜共栄圏樹立が戦争目的で、これを是とする研究者が「大東亜戦争」を使用すると、保坂氏は言っているが、果たしてそうだろうかー。中国では抗日戦争呼んでいるそうです。国によって呼称が違ってもよいと思います。
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先の戦争 (kakek)
2015-06-01 12:28:59
Wacin さん
インドネシアでは「Perang}といえば、独立戦争を指すそうです。大東亜戦争はPprang Asia Raja"と呼ぶこともあるそうですが、一般にはPerang dunia yang kedua"gが普通のようです。”Perang Pacifico"とは翻訳以外には使用しないとのことです。”先の戦争”が一番良いですね。
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正義の戦争史観から複眼的な現実史観へ (lordyupa)
2015-06-08 19:31:23
ブロガーの言われる通り、課題や状況に応じて若い人も大東亜戦争と呼んでも全く差し支えないと思います。
chobimameさんの書かれたように、一般的には、「第2次世界大戦」とよぶのが中立的でよいのではないでしょうか?

<正義の戦争史観>
自国は正義であり、敵対する国は悪の野蛮で残虐な国家であり、正義を実現するためには、いかなる手段を用いて、どんな残酷なことをしてもかまわない。
①皇国史観:
大東亜戦争は、大日本帝国が鬼畜米英からアジアを解放するために戦った聖戦である。・・英米の傀儡政権:中華民国の蒋介石勢力をアジアから駆逐して大東亜共栄圏を樹立すれば、共存共栄の恒久の東洋平和が確立される。16世紀以降、欧米列強のアジア植民地解放独立戦争を徹底支援するのが日本の使命。
②東京裁判史観:
太平洋戦争は、自由と民主主義の旗手米国がアジアを侵略する「独裁的ならず者国家」日本を倒すために戦った正義の戦争である。文明と人道と正義の」国である米国が、野蛮な犯罪国家日本を裁くという考え方は、ピルグリム・ファーザアーズ以来のインディアン虐殺の歴史を正当化してきた「明白な運命」理論に源を発する一貫した考え方であり、対日戦勝利の際の一時的な信念ではなく、戦後もヴェトナム戦争、イラク戦争をも正当化する根幹思想である・・戦前の日本、ドイツのような独裁国家が滅亡し、すべての国が米国のような自由民主主義国家になれば、世界は平和になる。
③コミンテルン左翼史観:
日米戦争も欧州戦線も日中戦争も、資本主義体制である日米英独仏中が覇権を争い、アジアの植民地を奪い合った帝国主義戦争である。・・戦争は植民地を奪い合う帝国主義国家が起こすのだから、全世界が共産主義化すれば、戦争はなくなる。人民を搾取する資本家階級とその支持者を抹殺して、労働者プロレタリア階級が一党独裁政治を実現すれば、楽園が生まれる。
・・・正義の戦争史観は、
歪曲・捏造が起こりやすいのですが、
①の皇国史観、③のコミンテルン共産主義史観は、概ね、その問題個所がある程度、具体的に明らかになっているのですが、②の東京裁判史観は、いまだに、その虚妄性が亡霊のようにさまよっています。

日本の(当時の国益や軍事上)の意図を脇に置いて、
国際政治に結果として与えた影響を羅列すると、
①日清戦争での日本の勝利・・・・中華帝国による近隣諸国に対する支配体制(華夷柵封)崩壊
②日露戦争での日本の勝利・・・・16世紀以降の白人人種の欧米列強による植民地支配の崩壊開始。ロシアが弱体化し、世界初の共産主義革命を結果的に促進。
②大東亜戦争で、日本が初戦での欧州列強に対して勝利し撤退させた事と最終的な日本の敗退・・・・アジア諸地域での、戦後の独立戦争を結果的に大きく促進。中国での中華民国を消耗させてその敗退(台湾への逃亡)と戦中は正面での日本軍との戦闘を避けてきた共産党の戦後の躍進にも、結果的に促進。



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太平洋戦争は使わない (kakek)
2015-06-09 10:37:09
lordyupa さん
いつもながら、問題を倫理的に整理して頂き感謝。当時の国家が閣議決定した呼称であり、国内では大東亜戦争が公式なものだと思います。戦争目的が一方的なアジア侵略だったとする立場の方は、大東亜戦争を使うと、右翼視されますね。僕は太平洋戦争は使用しません。理由は戦域が太平洋だけではない、簡単な理由からです
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