先日のこと・・・夕方、ラッシュの駅で電車に乗ろうとして並んでいると、しばらくして怒鳴り声が聴こえた。見ると老人がガラの悪い男に怒鳴られ危険な様子だが、誰も知らんふり。私は出て行って間に入った。しばらくして駅員の方々が来た。それでも危険と思い、老人の方に来た電車に乗るように言った。(ガラの悪い怒鳴っていた男から引き離さねばならない)怒鳴っていた男は普通ではない。帰宅してから気分が悪かった。
このごろだんだん「われ関せず」になっていく社会。目の前で大勢の人が見ているのだけれど「成り行きを見ている」のか・・・しかし本当はどうしてよいのかわからないのだろう。
帰宅しても気分が悪かった。私は武術ができたり腕力が強かったりというタイプではない。
「一応出てみる」それだけである。あとでぞっとすることもある。
昨日「ローマ史」の本を買った。塩野七生さんの「ローマ本」は全巻持っているが、それでも飽き足らず・・・。毎日が暑くてパソコンに向かうのもくったくた~。
私はイタリアオペラ、特にヴェルディをよく勉強したり歌ったりしたが、ヴァーグナーは心ひかれるのに避けてきた。それについては今まで理由を書いてきたが、もうそれは繰り返さない。
マックス・ローレンツ、ナチスの「あの時代」に全盛期を迎えた偉大なヘルデン・テナーが私を魅了したのだ。彼のヴァーグナーを聴いてまるで多感な十代の時のように心震えた。
そしてほとんど毎日聴いている。ローレンツを聴いてヴァーグナーの真髄を感じた。このことはとても文章で書き表わすことはできない。ローレンツの歌は他の誰のヴァーグナー歌いとも違った。
同年代にライヴァル視されていたラウリッツ・メルヒオールなど、なぜライヴァル視されていたかも納得できない。ローレンツの歌はそのひとつひとつの言葉・語り口のような歌唱がもうどうにもならないほど心を打つのだった。
ブログのティールーム
マックス・ローレンツのことは何度も書いてきた。彼はドイツ人だが夫人がユダヤ系、ヒトラーは「ローレンツをバイロイト音楽祭から降ろせ」と言うがヴァーグナー家の当主は「ローレンツなしではバイロイトは成り立たない」と拒否。
ローレンツは見事にヴァーグナーを歌い、なんとヒトラーをも魅了してしまった。
彼はドイツの音楽を絶やしたくない、誇り高く歌うだけだった。夫人を護り、また同僚のフラグスタートがベルリンから脱出するのを助けた。フラグスタートの夫君はノルウエーで無実の罪(政治犯としての)で獄中にあった。戦火の中をローレンツ夫妻がフラグスタートを保護し、無事に国外に脱出することに関与する。フラグスタートの自伝を読むと、それがいかに困難なことであったかがよくわかる。しかしローレンツは戦後、仕事がなかった・・・それはナチスのもとで歌ったということだった。
「歌を聴けば彼の苦境がわかる」ような気がした。そして聴く者の心を魅了する。
では「リエンツイ」(ヴァーグナー作曲)から・・・
ローマに実在し《最後の護民官》と称された悲劇の英雄リエンツイの物語。
「リエンツイ」ヴァーグナー初期の名作のオペラ。歌うのはマックス・ローレンツ、私の尊敬するヘルデン・テナー(英雄的な強大ンな声のテノーレ)だ。
1941年の録音
この場は民衆の歓呼でリエンツイは迎えられるが、やがてローマ皇帝と教皇が結託してリエンツィを弾圧、民衆を扇動しリエンツイは無念の最期。
Max Lorenz - Rienzi! Ha, Rienzi hoch!... Erstehe, hohe Roma, neu! - (Rienzi di R.Wagner)
対訳【部分)
新たによみがえれ、偉大なるローマよ!
自由になれ。ローマ人は皆自由だ!
民衆
ローマを自由に!すべてのローマ人に自由を!
リエンツィ
ローマが自由であるためには掟が必要だ。
すべてのローマ人は秩序を守るように。
暴力と強盗は厳しく罰する。
盗賊はローマの敵だ!
ローマは今そうであるように、
思い上がった者どもには扉を閉ざすが、
平和をもたらし、掟に従う者には
温かく歓迎する。
敵はそなたらの怒りに触れ、
悪しき者は滅びよ。
巡礼が自由に、喜ばしく訪れ、
牧人がのんびりと羊を守る街となれ!
さあ、掟を守ることを誓うのだ。
自由なローマ人は聖なる誓いを立てるのだ!