井財野は今

昔、ベルギーにウジェーヌ・イザイというヴァイオリニスト作曲家がいました。(英語読みでユージン・イザイ)それが語源です。

君が代考(2)

2010-04-01 23:26:26 | アート・文化

天皇讃歌とも受け取れるこのテキストの内容,現行憲法下で国歌と言うにはいかがなものか,という主旨で国歌演奏に反対する意見もある。アメリカが押し付けていった現行憲法は,そこまで絶対視できるのだろうか?天皇制があることでどれだけのメリットが生じているかを考えれば,ことはそれほど単純な問題ではないだろう。

しかし,調べてみると,もともと「君が代」ではなく「わが君は」だったという。紀貫之が改ざんして収録した「和漢朗詠集」が後世に伝わり,明治時代,大山巌が国歌に推挙したという歴史があるようだ。

ところが,この「君が代」には二重の意味が込められていた。それが福岡市周辺の地名だという。

「千代に八千代に」
県庁のあるところが千代町。 福岡県民なら皆知っている地名だ。

「細石の」
JR筑肥線波多江駅から南に約3km進むと細石神社というのがある。全く細かくない大きな石が御神体として置いてあるそうだ。近くに「伊都民俗資料館」がある。いわゆる「魏志倭人伝」に出てくる「伊都国」である。

「いわお」
その細石神社から南7kmほどのところに「井原(いわら)山」というのがある。井原の尾,裾野という意味で「いわお」。

「こけのむす」
福岡県糸島市志摩船越にある若宮神社,ここに「古計牟須姫(こけむすひめ)」こと「磐長姫(いわながひめ)」が祀られている。猿田彦の長女で,次女が木花開耶姫命(このはなさくやひめ)。コケムスヒメは苔牟須売神とも書き,不細工だったという説と,本当は美女だったという説がある。ニニギノミコトはコノハナサクヤヒメを娶る。まあ日本書紀は都合の悪いことは改ざんしてあるだろうから,本当は美女説を信じよう。

なぜコケムスヒメなのかを探っていくと縄文の神だの卑弥呼だのが出てくるので,それ以上は立ち入るまい。「君が代は九州王朝の讃歌」という本まで出ていた。

いずれにせよ,福岡で君が代を演奏するのは,大変意義深いのではないかとまで思えてくる。演奏反対の人々は,このようなことを知っていたのだろうか?

多分,知っていたのだろう。なぜなら,千代町の近くに九州大学の箱崎キャンパスがある。それ以外の地名は全て九州大学が今移転を進めている前原市の近くだ。君が代が間違って九州大学讃歌に受け取られてはいけない,という危機感に駆られた人々が,君が代演奏に異を唱えたに違いない。

さあ,エイプリル・フールも残りわずかだ。おやすみなさい。


君が代考(1)

2010-04-01 21:12:44 | 音楽

大学の入学式・卒業式で君が代を演奏する,この件について少々騒いだ人達がいた。外部の投書をきっかけに,今度から演奏するように学長が決めたらしいのだが,何十年も演奏されていないのは,それなりの理由があるからで,どうして投書一つで決定なのか,という公開質問がされた。

どうなるのかな,と行方を見守っていたのだが,その回答を今のところ見る機会を得ていない。

先日のバンクーバー・オリンピックではカナダ国歌を少女がジャズ風にアレンジした物を歌っていた。日本では君が代をジャズ風にアレンジしたとの咎で懲戒免職になった教師がいた。演奏しても問題,演奏しなくても問題,国歌とは難しいものである。

ジャズ風にするのが悪いのならドイツ風にするのも悪いのではないだろうか。井財野としては,この点が大いにひっかかる。

ところで,「君が代」は何調でしょう?

「白鳥」・・・いい線いってます。
「名誉会長」・・・当たらずとも遠からず。
「駄洒落快調」・・・笑ってる場合です。

答え「壱越(いちこつ)調」

律音階という言い方もできるが,もともと雅楽の旋法である。ニ調でもハ調でもない。この旋律は日本以外の何ものでも無い。近隣諸国の国歌のほとんどが,ヨーロッパ音楽を基盤に,その国の味付けをしているだけ,というのに比べると,堂々たる出来。日本の誇りであろう。

それにエッケルトというドイツ人が和声付けしたものが,今一般的に普及している君が代である。半音階あり偽終止あり,どう見てもドイツ風。それで処理できなかった最初と最後はユニゾンでごまかしている。こんなんでええの?

これを唱えたのは井財野が初めてではない。坊田寿真の「日本旋律と和声」にその主旨のことが書いてあり,それに賛同しているに過ぎない。

日本旋律と和声 (1966年)
価格:¥ 452(税込)
発売日:1966

一方エッケルトは

[きみがよ]の部分に複雑な音を入れることは、声は和しても何となく面白くない。日本の国体にあわぬような気がする。それゆえ[きみがよは]の発声にはわざと和声をつけぬことにした。
と言ってのけたらしいから,物は言い様だ。

日本と西洋が見事に融合している,と積極的に賛辞を送る方もいらっしゃるので,あまりムキになるのは止めよう。

ただ,演奏を問題にするなら,この点を問題にしてほしいと,音楽屋さんは思う。音楽大事典によると,当初は雅楽調の譜面が作られたのだが,行方不明になったとある。それが普及すれば,問題は減るのに,と思っていたら,21世紀はすごい,インターネット上では,その雅楽の譜面が公開されていた!(「第ニの君が代について」を参照されたし)

これを演奏すれば,とても意義のある国歌演奏になるだろう。

と思っていたら,今日,どこかの教室からエッケルト版の君が代を練習しているのが聞こえてきた。あ,演奏するんだ。でも,平凡な結果にちょっとがっくりだった。

三つの君が代―日本人の音と心の深層 (中公文庫)三つの君が代―日本人の音と心の深層 (中公文庫)
価格:¥ 740(税込)
発売日:1999-08

君が代のテクストが問題だから,ということで異を唱える方もいらっしゃるが,それに関してはまた今度。

今日はエイプリル・フール。どこまで本当でしょう?