井財野は今

昔、ベルギーにウジェーヌ・イザイというヴァイオリニスト作曲家がいました。(英語読みでユージン・イザイ)それが語源です。

バッハ:プレリュード〈オルガン点〉

2010-11-16 22:03:42 | ヴァイオリン

さっそくコメントをいただいたのはありがたいのですが、まだ終わっていません・・・。もう一つだけ書かせてもらって良いですか?

「オルガン点」というのは、オルガンの足鍵盤をずっと踏むような、長い補続音のこと。これは、興奮に向かうか鎮静に向かうか、どちらかなのである。英語でorgan point,ドイツ語でOrgelpunkt.

その前に、オルガン曲を聞いたことがなければ全く見当がつかないと思うので、まずは聞いて、オルガン点とはどういう効果をもたらすかを味わっていただきたい。

さらに、それを他の器楽曲に置き換えた場合どうなるか、これも知っておいた方が良い。ブランデンブルク協奏曲の第3、5番、ヴァイオリン協奏曲の第2番ホ長調などに用例がある。

その上で、バッハの無伴奏曲、6曲中5曲に用例がある。このパルティータ第3番では、このプレリュードに現れる。(43小節目から50小節目までと120小節目から122小節目まで。)

同一の低音(オルガン点)の上に、毎小節違う和音が乗っている。それが小節ごとに緊張を増し、これ以上持ちこたえられない、というピークに達し、ついに次の解決がはかられる! この仕組みに「感じない」ことには、お話にならない。

例えてみれば、紙の袋に水を注ぎ足していって、袋が段々濡れてきて、水が浸み出し、あっ、漏れる、漏れる、あっ、あっ、あっ、こぼれたぁ、という感じだろうか。

この場合、紙の袋が水にいつまでも耐えられる訳はないが、どこまで耐えられるかを興味深く見る、というのが前提で、紙とビニールが同じ耐性を持つとか、逆にコーヒーフィルターやちり紙のような紙だという前提で眺めている訳ではない。

感じない人に感じなさいというのは無理がある。しかし実際には結構「感じない」人が多くて、私は言葉を失うのである。

この曲を演奏する方々におかれては「オルガン点」を感じて、大いに興奮していただきたい。