井財野は今

昔、ベルギーにウジェーヌ・イザイというヴァイオリニスト作曲家がいました。(英語読みでユージン・イザイ)それが語源です。

エルガー:威風堂々第1番

2019-02-13 23:52:00 | オーケストラ
NHKFMの「気楽にクラシック」で威風堂々の第2~4番を取りあげていたのだが、予想より多くの方が1番以外を支持していて、正直驚いた。

それでも、一番の名曲は第1番だと司会者も一言触れていた。

それはそうでしょう、当然、と思うけど、一応「なぜ当然か」筆者の見解を整理してみよう。

まず冒頭のトランペットがキャッチー。
オクターブのユニゾンはベルリオーズのハンガリー行進曲等、前例はいろいろあるが、大抵「属音」(ハ長調ならばソ音)。
ところが、この第1番は主音の半音上!(属音の三全音上下、か?)

ニ長調の曲なのに変ホ長調のように始まり、すぐト短調、変ロ長調と転調を繰り返して行き場がなくなったら半音階で、半ば強引にニ長調の主題に滑りこむ。

しかも、アウフタクトがタイで1拍目と結ばれた音型がずっと続くものだから、どこが1拍目だかわからない。

調子も拍子も、聴き手をだます仕掛けに満ちあふれたイントロダクション。

そう、まだ序奏なのに、この複雑さ。

続く主題のジグザグぶりがまたすごい。和声的には、主和音基調であまり動かないのに、ヴァイオリンで奏でられる旋律はかなり非弦楽器的。かといって金管にも向かない。かなり野趣あふれる弦楽器特有のザクザク感(結局弦楽器的か?)。

それが終わって、いわゆるヴァイオリン的な動きがあったかと思いきや、今度は半音階の上で何調だかわからない世界に突入。

行進曲で、このように調子がわからない、拍がわからないなどという曲は、多分それまでなかっただろう。

とにかく独創的なのである。

このような独創性は2番以降には見られない。

ついでに題名の邦訳も独創的とは、昔から語られている。よくぞ威風堂々と訳した。

オーケストレーションも威風堂々たるもの。
大体は少し省略して演奏するが、楽譜の指定によればハープにオルガン、打楽器には8人必要となる。

なので、音楽鑑賞教室のオーケストラには、たまに「残念な声」が届くそうだ。曰く「ビデオと違う!」

8人の打楽器奏者は、単に四分音符をシャンシャン、じゃんじゃん、ドンドンと刻んでいるだけなのだが、8人の奏者が一斉に立ちあがり、鈴やタンブリンを振りかざして、とくれば、否が応でも盛り上がる。それにオルガンがジャーッと鳴れば宗教儀式のようなトランスが生じる。

熱心な学校は、そのような録画を見せる予習をしてから、本番を鑑賞するそうだ。
オーケストラ側からすれば「そこを期待されてもなあ」なのだが……。

まあ、そこを取りあげても、ユニークであることは確かだ。

繰り返すが、以上の特徴は第2番以降には無い。
なので、断然他を圧しての名曲と考える次第である。

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