井財野は今

昔、ベルギーにウジェーヌ・イザイというヴァイオリニスト作曲家がいました。(英語読みでユージン・イザイ)それが語源です。

Hybrid Bus

2010-04-15 19:04:14 | まち歩き

過日,福岡市内を走る「ハイブリッド・バス」というのに乗った。ガソリンと電気で走るバスのことである。

運転席の背後にディスプレイのパネルがあって「停止」「アイドリング」「アシスト」「定常走行」「充電」「アイドルストップ」という文字が書いてある。走行中にインジケーターがそれらの文字を忙しく指し示し,時々(多分効率良い状態の時)「ECO」というマークが浮かび上がる。

考え方によっては,何ともお節介なディスプレイだが,今は物珍しさで機能しているというところかな。

と,ここまでは一般的な視点による記述である。

<ここからは疑似バスマニアの記述>

福岡県を走る西日本鉄道のバス,通称西鉄バスは西日本車体工業というところで作っている。自前の車体工場を持っている珍しい私鉄バスと言える。

私は鉄道が好きであって,バスにはそれほど興味はなかった。一方で,乗り物なら飛行機もバスも何でも好きという人も世の中にはいる。その昔,ビータ(演奏旅行)で暇を持て余していた時のこと,一緒になったチェロ弾き,通称ダイちゃんが「乗り物マニア」であった。

仕事場では寡黙なダイちゃん,私が九州育ちだということがわかると,にこやかに話し始めた。
「九州には西日本車体製の車体の短いバスが走っていますね。」

それまで,バスの長さが違うなんて,気にも留めなかった。しかもバスは自動車会社が作るんじゃないの?

「全部作るメーカーもあるけれど,シャーシ(枠組みやエンジン部分)とボディ(それ以外)は別の会社で作るのも多いですよ。バスの前方の出入口にプレートが貼ってあります。(ダイちゃんは)乗り降りの時,必ず見ますねぇ。」

へえ・・・そういうものか,・・・以来,ニ十数年私も時々プレートを眺める日々が続いている。

それで,このハイブリッド・バス,西鉄バスなのに西日本車体のプレートがない。ついに西鉄も他社のバスを買う日が来たか?
その程度に思っていたのだが,よくよく調べると,大きな時代の転換点にさしかかっていることがわかってきた。以下全て,全く知らなかった事実である。

何とこの西日本車体工業,今年の1月21日に解散発表,8月31日に解散するのだ!地元にいながら,このニュースを見落としていたのは迂闊だった。

日本のバスメーカーは4社しかない。三菱ふそう,日産ディーゼル,いすず,日野,である。このうち日産ディーゼルと三菱ふそうがバス事業を統合して共同生産を開始することになった。これまで西日本車体は日産ディーゼルの発注を一手に引き受けていたけれど,それが皆無になると会社として存続はできず,やむなく解散なのだそうである。

これで「世界No.1クリーンディーゼルエンジン」と「日本No.1バス車体」の組み合わせは無くなっていく。

この組み合わせ,実は西日本に数多く採用されていて,代表的なところに京都市と高槻市が挙げられていた(うわっ,先月行ったばっかり!)。関東地方にも無い訳ではないそうだ。何が「日本一」なのかと言うと,全て乗る側の視点からデザインされている,乗りやすいバスとのこと。それに比べると国交省の標準仕様は,かなり乗りにくいとか・・・。

つまり,地元民はほとんど気付いていなかったが,数少ない福岡発信の文化だったのだ。何とも残念な話である。

そして,このハイブリッド・バス,日野自動車製である。ジェイ・バスというそうだ。ライセンスの関係で,西日本車体がボディ担当はできないらしい。こうして,福岡発の文化が消えていくのか・・・。

全国各地の皆様,西日本車体のバスが走っていたら,大事に見守っていただきたい。


松脂の話

2010-04-12 21:34:39 | ヴァイオリン
ヴァイオリニストは楽器そのものの専門家ではありません。楽器を使う専門家ですが,楽器そのものの専門家は楽器屋さんであり,楽器製作者です。なので,本来私が言うべきことではないと思うのですが,楽器の専門家があまり言ってくれる訳でもなく,その割には,あまりに知られていない話が結構あるので,敢えて披露したいと思います。

弓には松脂というものをつけて音を出す訳ですが,これは,落としたら「割れます」。

と,笑いをとるつもりではないのです。実は,お子さんがしょっちゅう落として割ることをぼやく親御さんが結構いらっしゃいます。大人になると,さすがにあまり割らなくなる,という話をすると「ああ,まだまだ成長していないんだ」と思われるようですが,実は先日,私も落として,ひびがはいりました。なので,誰でも割ることはあると思うのです。まず,割ることに対しては寛容になっていただきたいのですが・・・。

私が割りかけたのはもう十数年使っているアルシェのアルミ缶にはいっているものです。これが当時開発されたばかりで音が一番良かったからです。これがあと3ミリ程度残っているのですが,これを大事に使うのは難しいです。

松脂が音に影響するしないは,とても気にする人と,ほとんど気にしない人といます。私自身は,全く気にしない方でした。そして一旦買うと10年くらい使うので,あれやこれや試すような性質のものでもないですから。

ところが,その10年に一度買う時になって,世の中にはいろいろあることを知る訳ですね。

気にする方で「昔のベルナーデルがとても良かった」とおっしゃる方が結構いらっしゃいます。その話を受けて「それでは,昔のベルナーデルの再現をしよう」というコンセプトで,アルシェは開発されたそうです。だから,それにならってアルミ缶が採用されているとのこと。

さて,昔のベルナーデルはどうやって作ったのか,何か記録が残っていた訳ではないようでした。それで,現存する松脂を分析すると,ベルナーデルはフランスの松で,ピラストロはドイツの松で,日本のクロネコ等は日本の松で作られたことが,まずわかったそうです。

よし,フランスの松だ,ということで,フランスの松から松脂をとるのですが,これを何度の温度に上げて溶かすのか,それをどのくらいの時間をかけて冷やすのか,というファクターから,同じ原材料から様々な松脂ができてしまったとのこと。1年ばかりの試行錯誤の末,全く使えない代物もできてしまった中,これだろう,というのが製品になっているようです。

その後,現行のベルナーデルが出ましたが,比較するとやはりちょっと違う質なので,私自身の好みからするとアルシェの方が弾きやすいです。

その後もギョームやアルシェの高級品も出ましたが,試していないので何とも言えません。前述の通り,気にしなければ全く気にならないのだけれど,今,ピラストロの松脂で弾きたいとは,やはり思わないですね。持っているので,たまに付けるのですけれど,あまり良い音には聞こえないです。

皆さんのお好みや如何に?


AVATAR

2010-04-08 23:13:10 | アート・文化

権化,化身,と英和辞典には書いてある。

このタイトルの映画を観に行った。未知の世界の住人との交流,まだこんな手法が考えられる,ということに感心した。さすがキャメロン監督。

で,3D映像を特別な眼鏡をかけて観る訳だ。3Dと言えば,再び「万博」である。筑波の科学万博の時は,3D映像を売り物にしていたところが何ケ所かあり,数カ所は観た。どこも専用の眼鏡をかけて観るもので,昔ながらの赤と青のサングラス的なものもあれば,偏光ガラスを使った眼鏡等,方式は様々だったような記憶がのこっている。残念ながら,私は眼鏡をかけているので,なかなかきれいな立体に見えなくて難儀したものだ。結局一つもまともな立体映像には見えなかったような気がする。

それから四半世紀して,久しぶりにお目にかかった3D映像である。専用の眼鏡を貸し出されて観るところは同じだが,さすがに進歩していた。眼鏡 on 眼鏡でも立体的にちゃんと見えた。

しかし,観続けていると慣れてしまって,あまり飛び出してくるようには感じられなくなってしまった。それに私の場合,眼鏡 on 眼鏡,眼鏡をずっと手で押さえての鑑賞である。「手放し」では楽しめない。

そうなると,別に3Dでなくてもいいんじゃない?と思えてくる。映画を観ながら「これが立体的に見えたらもっとすばらしいのに」と思ったことは一度も無い。モノクロの映画が総天然色になるのとは違うような気がする。

大体,眼鏡を使わなければならないのが,まだ未成熟だ。静止画像ならばホログラフは既にできているのだから,動画のホログラフができなきゃね・・・。

まあ,発展途上段階だから,いろいろ短所はある,というところだろう。数年後には国内の映画館の約3割が3D対応になるそうだ。楽しみである,と述べようかと思ったが,眼鏡 on 眼鏡をしなければならないのなら,普通の映画の方が良い。平面に写し出された画像,充分楽しめるんだけどな・・・

それにも増して楽しめなかったのは音楽。タイタニック・コンビであるホーナーの作曲だ。タイタニック同様の弱進行の和声が時々聞こえてきたものの, 何の印象にも残らない音楽だった。監督は当然「タイタニック」同様のヒットを期待したのだと思うが,残念でした。


万博記念公園

2010-04-04 08:38:18 | まち歩き

予定が変更されて,数時間が急に空いた。立っていた場所は新大阪駅近く。目の前に大阪市営地下鉄御堂筋線が走っている。関西圏で最も長い歴史を持つ路線だ。東京の銀座線,丸の内線と同様,第三軌条方式(架線からでなく電気を流す専用のレールから集電する)で電車なのにパンタグラフがない。でも銀座線よりモダンでかっこいい,と私は思う。

これが梅田駅あたりだと,頭の中で自動的に欧陽菲菲の「雨の御堂筋」が流れるのだが,新大阪では流れない。ヴァイオリン仲間の一部では隣駅の「西中島南方」が特別な感情をひき起こす,と学生時代に聞いたが,私は違う。この北側には北大阪急行という4駅しかない私鉄があり,その昔は大阪万博の会場まで行けたはずなのだ。

1970年開催の日本万国博覧会,行きたくて行きたくて,たまらなかった。で,ついに行けなかった。これほど夢のある催し物,行けなくて悔しかったものは,後にも先にもない。今後もまずない。

行けなかったのが本当に残念だった。当時は今程,大阪が近くにはなかったから,行くだけで大変だったのだが,行けば充分お釣がきただろう。

大人になって,万博の類いはいくつかあった。今度こそ逃してなるものか,と1985年,筑波の科学万博には仕事も含めて都合4回行った。でも,当時の気持ちが満たされるものではなかった。
その後も,1990年大阪の花と緑の博覧会,2005年の愛・地球博,と行ったのだが,満たされない気持ちを抱えたままである。さすがに悟った。あの「子供の頃」に観ないとダメなのだ。

ガックリである。博覧会ごときで,と今の人は思うだろうが,所詮松鶴家千とせだ。この「夢」は,当時生きていた人しかわからないし,悔しい思いも当時行けなかった人しかわからない。

だけど,その「夢の跡」で良いから観てみたい,と常々思っていた。でも,そこで勝手に往時に思いを馳せながら「ひたりたい」ので,ふらっと一人で行くに限る・・・ん?・・・あっ,そうか,今行けばいいんだ・・・。

という次第で,過日初めて大阪の万博記念公園に向かうことができた。

北大阪急行の終点千里中央駅は,ショッピング・モール等も含む,ちょっと洒落た乗り換え駅。ここから大阪モノレールに乗る。これは営業キロ数が世界一長いモノレールだそうで,ギネスに認定されている。ただ,大阪万博の20年後に開業とのことで,当時は,北大阪急行の東西線というのが,現在の中国自動車道の敷地を走っていたそうだ。

折しも,大阪万博から40年,ちょうど「鉄鋼館」を改装,EXPO'70パビリオンとして当時の「立体音楽堂」を再現,などというポスターも目にした。これはいい。鉄鋼館の音楽と言えば武満徹の仕事という知識が,頭の片隅にひっかかっていた。

万博記念公園駅で降りる。かの有名な「太陽の塔」を初めてナマで見る。何とも不思議な塔だ。顔が二つあるような感じで。万博の凄さを実に象徴している。

二百数十円払って園内に入る。鉄鋼館はその東奥だ。前川国男の設計とかで,なるほどコンクリート打ちっぱなしにガラスの壁面,東京文化会館,熊本県立劇場と同じだ。

さて,いよいよパビリオンに入ろうか,と思ったのだが,時計を見た。駅からここまで10分以上かかっている。それから計算すると,ここに滞在できるのは10分程度,それで帰らないと,後の予定に差し支える・・・。

あーあ,よくよく縁がないなあ。ここの前に数分たたずむのに40年を要した。次来れるとして,いつになるやら。せめて爺さんになる前には訪れたい,と思いながら,再び大阪モノレールに乗ったのであった。


君が代考(2)

2010-04-01 23:26:26 | アート・文化

天皇讃歌とも受け取れるこのテキストの内容,現行憲法下で国歌と言うにはいかがなものか,という主旨で国歌演奏に反対する意見もある。アメリカが押し付けていった現行憲法は,そこまで絶対視できるのだろうか?天皇制があることでどれだけのメリットが生じているかを考えれば,ことはそれほど単純な問題ではないだろう。

しかし,調べてみると,もともと「君が代」ではなく「わが君は」だったという。紀貫之が改ざんして収録した「和漢朗詠集」が後世に伝わり,明治時代,大山巌が国歌に推挙したという歴史があるようだ。

ところが,この「君が代」には二重の意味が込められていた。それが福岡市周辺の地名だという。

「千代に八千代に」
県庁のあるところが千代町。 福岡県民なら皆知っている地名だ。

「細石の」
JR筑肥線波多江駅から南に約3km進むと細石神社というのがある。全く細かくない大きな石が御神体として置いてあるそうだ。近くに「伊都民俗資料館」がある。いわゆる「魏志倭人伝」に出てくる「伊都国」である。

「いわお」
その細石神社から南7kmほどのところに「井原(いわら)山」というのがある。井原の尾,裾野という意味で「いわお」。

「こけのむす」
福岡県糸島市志摩船越にある若宮神社,ここに「古計牟須姫(こけむすひめ)」こと「磐長姫(いわながひめ)」が祀られている。猿田彦の長女で,次女が木花開耶姫命(このはなさくやひめ)。コケムスヒメは苔牟須売神とも書き,不細工だったという説と,本当は美女だったという説がある。ニニギノミコトはコノハナサクヤヒメを娶る。まあ日本書紀は都合の悪いことは改ざんしてあるだろうから,本当は美女説を信じよう。

なぜコケムスヒメなのかを探っていくと縄文の神だの卑弥呼だのが出てくるので,それ以上は立ち入るまい。「君が代は九州王朝の讃歌」という本まで出ていた。

いずれにせよ,福岡で君が代を演奏するのは,大変意義深いのではないかとまで思えてくる。演奏反対の人々は,このようなことを知っていたのだろうか?

多分,知っていたのだろう。なぜなら,千代町の近くに九州大学の箱崎キャンパスがある。それ以外の地名は全て九州大学が今移転を進めている前原市の近くだ。君が代が間違って九州大学讃歌に受け取られてはいけない,という危機感に駆られた人々が,君が代演奏に異を唱えたに違いない。

さあ,エイプリル・フールも残りわずかだ。おやすみなさい。