ニューヨークのメトロポリタンオペラの旬な公演を映像で公開するMETライブビューイングは、日本でもやっているんですね!コンサートホール前で貰ったチラシによると、2012-13のシーズン中、全部で12作も順次やってくれるのです。日本は、オペラは敷居が高い(高い、チケットが取りにくい、公演日があまりない)ので、このシリーズの日本上映を知った時は、内心、小躍りしました。
さっそく、シリーズの開幕作品のドニゼッティ《愛の妙薬》を見に行きました。正直、《愛の妙薬》はしょうもないドタバタ喜劇として、作品としてはさほど好きではないのですが、ネトレプコ見たさ、聴きたさです。ロンドンのバービカンセンタでのMETライブビューイングは、いつも前売り段階で直ぐに売り切れていたので(これはシアターが小さいから?)、オペラ熱が高まっていると言われる日本でも、満席なのではと恐れたのですが、どうってことはなく3割程度の入りで、ちょっと寂しいぐらいでした。お客さんは、一人で見に来ている人の方が多かったぐらいです。
公演そのものは、素晴らしい歌手陣の美声とキレの良い演出で、とても楽しめました。アディーナ演じるネト嬢、ネモリーノ役のポレンザーニを初めとする歌手陣は、さすがMETだけあって超豪華で誰も素晴らしいです。映画館ならではの迫力の音響で、どっぷり浸れます。また、コメディ度を落として、男女の三角関係のロマンス風に仕立てた演出も良かったです。テンポよく場面が進行し、自分が知っている《愛の妙薬》とは別の、モーッアルトの喜劇を見ているような、小気味よさがありました。舞台セットも、オーソドックスな設定ですが、とても美しいです。
一方で、当たり前ですが、ライブとはいえ映像の限界も。音は良く聴こえるもの、声量はどこまで拡張されたものかわかりませんし、生で味わえる劇場内に響く反響は味わえません。ROHでネト嬢が歌った時は、その劇場一杯に響き渡り、反響するソプラノが衝撃的だっただけに、映画館では物足りなさが残ります。また、カメラワークで、ネト嬢の表情がアップで見られる一方で、周囲の端やくは映らないので舞台全体のダイナミックさ、活気は伝わらないもどかしさもあります。
まあそんなことは、当たり前と言えば、当たり前の話なので、それでもMETのオペラがこんなに手軽に見られることを感謝すべきでしょう。次回の上演は、ヴェルディの「オテロ」。これは、イギリス帰国前に、無念にもROH公演に行けなかったので、是非、見ていたいと思っています。
※METライブビューイングのHPはこちら→
指揮:マウリツィオ・ベニーニ
演出:バートレット・シャー
出演:アンナ・ネトレプコ(アディーナ)、マシュー・ポレンザーニ(ネモリーノ)、マリウシュ・クヴィエチェン(ベルコーレ)、アンブロージョ・マエストリ(ドゥルカマーラ)
上映期間:2012年11月3日(土)〜11月9日(金).
上映時間(予定):3時間2分(休憩1回)[ MET上演日 2012年10月13日 ].