その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

NHK交響楽団/ エド・デ・ワールト/ ワーグナー 楽劇「ワルキューレ」第1幕(演奏会形式)ほか

2012-11-13 00:07:47 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)
 土曜日は雲一つない秋晴れでしたが、日曜日はどんより天気。昼下がりというには既に暗い渋谷の街でしたが、NHKホール前の並木の紅葉は息をのむ美しさで、晩秋を感じさせてくれました。木々の色合いはロンドンより東京の方が美しいです。


《NHKホール前》

 プレヴィン、マゼールと大物指揮者が続いた秋のN響定期でしたが、11月は中堅(?)のエド・デ・ワールトさん。でも、この日の楽しみは、何よりもワレキューレでジークリンデ役を歌うエヴァ・マリア・ウェストブレーク(ソプラノ)です。私の欧州滞在中、最も多く聞いた歌手の一人で、ロンドンで「アンナ・ニコル」(タネジ)、「3部作」(プッチーニ)、「トロイア人」(ベルリオーズ)、マドリッドで「ムツェンスク郡のマクベス夫人」(ショスタコーヴィチ)を聴いています。大きな声量もさることながら、豊かな演技表現と、繊細なソプラノにはいつも感服させられていました。なので、彼女がN響出演するこの演奏会は私にとっては、「行かなければならない(MUST SEE)」でした。

そして期待通り、休憩後に上演されたワーグナーのワレキューレ第1幕には、彼女を初めとする素晴らしい歌手陣の圧倒的存在感に完全にノックアウトでした。中でもウェストブレークのソプラノの素晴らしいこと。彼女の高音は神々しさを感じるほど清らかな響きがあります。加えて、広いNHKホール一杯に届く声量。「一流」のすごさをこれでもかと見せつけられた感じです。

男性陣も素晴らしい。フンディング役のエリック・ハルフヴァルケンもグッと地面から響くような魅力的なバスです。テノールのフランク・ファン・アーケン(ジークムンデ)は後半ちょっと疲れたかなあという感じがしましたが、演奏会方式とはいえ演技も入ったエヴァとのコンビネーションが良く、十二分に楽しませてくれました。

この独唱陣の迫力を前にすると、どうしてもオーケストラは一歩引いた端役的なイメージになってしまうのは否めませんが、ワールトさんとN響のコンビもしっかりしていて、歌手を引き立てつつ、しっかり自分たちの仕事をしているという印象でした。特に、冒頭の低弦パートによる導入部分などは、グーッと舞台に引き込まれ、ワーグナーの世界に瞬間没入させてくれました。やっぱり、ワーグナーは、先月のようなハイライト形式ではなく、1幕でも良いから歌手と音楽をセットでの演奏の方が、よりワーグナーの世界に没入できます。

前半は、武満の作品を堀さんのソロで2品。前半は大編成、後半は小編成の作品でした。私自身の集中力不足で、美しい音楽でしたが、なんとなく聞き流してしまったのが、残念。

いや〜、エヴァはまた来てほしいです。


《終演後のカーテンコール》




NHK交響楽団 第1739回 定期公演 Aプログラム
2012年11月11日(日) 開場 2:00pm 開演 3:00pm

NHKホール

武満 徹/遠い呼び声の彼方へ!(1980)*
武満 徹/ノスタルジア~アンドレイ・タルコフスキーの追憶に(1987)*
ワーグナー/楽劇「ワルキューレ」第1幕(演奏会形式)

指揮:エド・デ・ワールト
ヴァイオリン:堀 正文
ジークリンデ:エヴァ・マリア・ウェストブレーク 
ジークムント:フランク・ファン・アーケン
フンディング:エリック・ハルフヴァルソン


コメント (2)
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