文化の日の昨日、国立新美術館へリヒテンシュタイン美術展を見に行ってきました。国立新美術館を訪れるのは初めてでしたが、斬新な建築デザインの外観と広々かつ採光がたっぷり取ってある内部は、とても気持ちの良いものですね。祝日と言うことで、超混雑を恐れましたが、人はそれなりに入っているものの、ギリギリ自分のペースでまわることができる混み具合でしたので、ゆっくり鑑賞することが出来ました。
本展覧会は、リヒテンシュタイン候所蔵の美術・工芸品を展示すると言う珍しいものです。以前、欧州滞在中に、リヒテンシュタイン公国の美術コレクションは素晴らしいという話を聞いていましたので、この美術展を聞いた時は内心小躍りし、とても楽しみにしていました。
企画は、リヒテンシュタイン侯爵家が収集したヨーロッパ美術の中から、139点の名品を選りすぐり、日本で初めて公開するというものです。ルネサンスからバロック、17世紀オランダ絵画、新古典主義までの名画が贅沢に並べてあり、見どころたっぷりです。私の好きな、クラナッハ、レンブラント、ヴァン・ダイク、ブリューゲル、ハンスらの絵もあり、釘づけでした。また、目玉の一つである、ルーベンスの絵を10点集めたルーベンスルームは壮観で、ルーベンスはさほど好みではない私でも引き込まれます。ポスターで使われている、《クララ・セレーナ・ルーベンスの肖像》も、実物はポスターでは表れきれない瞳の強さが印象的でした。
ルーカス・クラナッハ(父) 《聖エウスタキウス》
[1515/20年 油彩/板 87×33cm]
ペーテル・パウル・ルーベンス《クララ・セレーナ・ルーベンスの肖像》
[1616年頃 油彩/板で裏打ちしたカンヴァス 37×27cm]
一方で、この美術展の一つの売りである、ウィーン郊外の侯爵家「夏の離宮」の一室を再現した「バロックサロン」は、私としてはもう一歩でした。天井画までを再現してある部屋はとても良く出来ています。ただ、新国立美術館のような近代的美術館の一室だけをバロックのサロンに換えても、前後の部屋の雰囲気とあわず、そこだけ浮いた感じがして、無理を感じざるえません。大英博物館やメトロポリタン美術館の大展示室の中で日本の「茶室」を見るような感じを受けてしまったのです。(実際は、「茶室」は大展示室でなく、隔離された静かな日本エリアにあるので、十分に雰囲気は出ています)
気になったのはそのぐらいで、全体としては優れものの企画展であることは間違いありません。なかなか見る機会の少ない上質の絵画、工芸品をたっぷり楽しむことができるので、おススメです。
※リヒテンシュタイン美術展の公式HPはこちら→
2012年11月3日訪問