その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

NHK交響楽団/ エド・デ・ワールト指揮/ ブルックナー交響曲 第8番 ハ短調

2012-11-18 00:03:18 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)


 N響定期Cプロに行きました。プログラムはブルックナーの交響曲第8番。ブルックナーの交響曲の中では7番は好きで何度か演奏会でも聴いていますが、4番、5番、9番以外は機会に恵まれず、8番は全く初めてです。指揮は先週に引き続きエド・デ・ワールトさん。先週はウエストブレークのソプラノにすっかり気を取られてすぎて、殆どマークできなかったので、私としては今回はデ・ワールトさんに注目です。

 1500円の自由席券でしたが、もう「この値段でこんな演奏を聴いていいのか」と申し訳なくなるぐらいの素晴らしい演奏でした。デ・ワールトさんの指揮は奇をてらったところが全くない、端正で整った指揮ぶりです。ブルックナーの交響曲と言えば、重厚長大、荘厳、神・・・などの重い単語が浮かびますが、「長」を除いては、こうした(私の)ステレオタイプとは一線を画する演奏です。「親しみ」、「優しさ」、「清々しい」、「サラサラ」といった単語が浮かんだ演奏で、指揮者の恣意性を取り除き、音楽そのものに語らせるという印象でした。

 第1楽章は、私の耳が温まっていなかったのか、あまり胸に刺されるようなところは感じられなかったのですが、第2楽章の躍動感、第3楽章の優美さは格別で、第3楽章が終わった時は思わず拍手をしたくなるほどでした。第4楽章のフィナーレも雄荘で80分を超える長い交響曲を締めくくるのにぴったりです。

 N響の演奏は金管陣が崩れなく良い仕事をしていました。弦のアンサンブルの良さは相変わらずですが、今日は普段にも増して弦、管のバランスが素晴らしかったです。

 会場の拍手は、大きさもさることながら、気持ちのこもった暖かいものでした。きっと、皆さん、同じ思いだったのでは。デ・ワールトさんも相当、嬉しそうにされてましたので、満足の行くものだったのでしょう。良い音楽を聴かせてもらったと、しみじみ思いながらホールを後にできる演奏会でした。

 余談ですが、8月に帰国して以来、N響は今日で5回目ですが、演奏の 安定感は素晴らしいですね。どの指揮者にも的確に適応していて、ハズレがありません。エキサイティングさ、サプライズという意味で物足りないところもありますが、この水準の高さは、(N響には失礼ながら)期待以上のものです。こんなことをつらつら思いながら、渋谷の坂を下りて帰路につきました。



第1740回 定期公演 Cプログラム
2012年11月17日(土) 開場 2:00pm 開演 3:00pm

NHKホール

指揮:エド・デ・ワールト
ブルックナー/交響曲 第8番 ハ短調(ノヴァーク版)
コメント (2)
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