その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

インキネン/ 日フィル/ ワーグナー ワレキューレ第一幕ほか

2013-09-08 07:18:00 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)


 私としては2か月の夏休みを置いていよいよ秋のコンサートシーズン開幕。そのオープニングコンサートはインキネンと日本フィルによるワーグナープログラム。鳥肌が立ちっぱなしの2時間となりました。

 特に圧巻は後半のワルキューレ第1幕。エディス・ハーラー、サイモン・オニール、マーティン・スネル の圧倒的な歌唱と迫真の演技が出色でした。ハーラーはサントリーホールが狭く感じるほどの声量とただ大きいだけでない感情細やかな表現が抜群。サイモン・オニールはロンドンでも何度か聴きましたが、甘いというよりは芯のあるテノール。ジ-クムントはまさにはまり役。第1場で彼が歌いはじめると、ホール内の空気ががらっと変わりました。ハーラーとの演技のコンビネーションもはまっていて、コンサート形式ですが舞台の迫力十分です。バスのマーティン・スネルは、私は初めてでしたが、重量感のあるバスは安定していて舞台を土台で支えるような存在感がたっぷり。三者三様の持ち味でこれぞ「本場もん」と聴衆を唸らせるのに十分なパフォーマンスです。

 インキネンと日フィルも頑張っていました。インキネンは若かりし頃のサロネンを思い出させる北欧っぽい金髪と端正な顔立ち。ワーグナーの重厚感、うねり、感情の爆発を日フィルから引き出します。日フィルも前半部の独奏含むチェロ隊のがんばりやホルンの美しい響きが印象的です。良い意味で、歌手陣についていこう、負けまいという思いの集積が「気」となって舞台上に漂っていました。

 終演後は、凄まじい拍手とブラボー。連勝中の横綱に土が着いたような狂騒ぶり。座布団があったらみんな投げていたに違いありません。それが不思議でない、会場が一体となって酔いしれたワーグナーワールドでした。

 前半は、ここでも『トリスタンとイゾルデ』の「愛の死」のエディス・ハーラーのソプラノが素晴らしかったです。力強さと清らかさの双方を持ち合わせた彼女の歌声は、ちょっと日本人歌手には難しいでしょう。聞き惚れるとはこのことで、一音たりとも聞き漏らすまいと前のめりで聴きました。

 唯一残念だったのは、会場が8割程の入りで結構空席もあったこと。こんな素晴らしい機会がもったいない・・・。会場入り口配られたチラシセットの中には、5万、4万する海外オペラハウスの引っ越し公演の案内が入ってましたが、「本場の良さはもっと近くに手の届く範囲にありますよ」と言いたかったです。


日時2013年9月7日(土) 16:00 開演 (15:10~プレトーク)

曲目
ワーグナー:ジークフリート牧歌
 :楽劇『トリスタンとイゾルデ』から前奏曲と愛の死
 :楽劇『ワルキューレ』から第1幕 (演奏会形式)
指揮
ピエタリ・インキネン/ Pietari Inkinen
出演
ソプラノ:エディス・ハーラー/ Edith Haller
テノール:サイモン・オニール/ Simon O'neill
バリトン:マーティン・スネル/ Martin Snell
日本フィルハーモニー交響楽団
コメント (4)
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