指揮者とオーケストラの間に深い尊敬の念が存在する中で、指揮者はオーケストラの能力の120%を引き出そうと煽り、オーケストラは指揮者に食らいつき、指揮者の指示を超えた領域にまで達しようと我を忘れたように演奏に没入する。聴衆はその緊張感と、緊張感を超えた信頼感が織りなす不思議な「気」を感じとる。コンサートに足を運ぶ最大の楽しみは、CDでは味わえないこの「気」であると思う。
そして、この日のブロムシュテットとN響の演奏会はホール一杯にこの「気」に満ちていた。特に後半のブラームスの交響曲第1番。2階の最後方の席に陣取った私にも、N響メンバーの集中力と86歳とはとても思えないブロムシュテットの気迫がガンガンに伝わってきた。
極めて端正で、重すぎず軽すぎもせず、良く言えばバランスがとれ、悪く言えば強いインパクトに欠けるとも言えるようなこの日の演奏は、私は好みだったが人により好き嫌いがあるかもしれない。でも、そんなことは問題ではなかった。その日、そこで、この音楽を耳で、肌で、目で聴いて、感じたということが大切だった。音楽を聴く喜びに満ちた演奏会だったと思ったのは、決して私だけでないことは、途切れのない大拍手からも良く分かった。
《休憩時間の風景》
第1760回 定期公演 Bプログラム
2013年9月12日
サントリーホール
ブラームス/大学祝典序曲 作品80
ブラームス/ハイドンの主題による変奏曲 作品56a
ブラームス/交響曲 第1番 ハ短調 作品68
指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット
Suntory Hall
No.1760 Subscription (Program B)
Thursday, September 12, 2013 7:00p.m. (doors open at 6:20p.m.)
Suntory Hall
Brahms / “Akademische Festouvertüre” op.80
Brahms / “Variationen über ein Thema von Haydn” op.56a
Brahms / Symphony No.1 c minor op.68
Herbert Blomstedt, conductor