調布音楽祭の特別公演として招聘されたロシア・ナショナル管弦楽団の演奏会に足を運びました(調布音楽祭については、また別のエントリーでご紹介したいと思います)。ロシア・ナショナル管弦楽団は、生で聴くのはもちろんのこと、名前すら聞いたのも全くの初めてでしたが、ミハイル・プレトニョフ(現芸術監督)が創設したロシア史上初めての民間オーケストラです。
今回、モーツァルトのピアノ協奏曲ではピアノ独奏、チャイコフスキーの交響曲では指揮したミハイル・プレトニョフさんも恥ずかしながら私には初めて。ここ数年ピアノ演奏は控えていたそうですが、才能ある有名なピアニストとのことです。
その前評判通り、ミハイル・プレトニョフさんのピアノは素晴らしいものでした。余計な装飾を省いた、ただただ美しいモーツァルト。プレトニョフさんは、昔のソビエトを思い起こさせる愛想が良いとは言えない、近寄りがたい雰囲気なのですが、ピアノから発せられる音楽は聴き手の心にスーッと入って来ます。大きな拍手に応えて、アンコールではモーツァルトのロンドニ長調K.485を演奏してくれました。
そして、休憩後のチャイコフスキー交響曲第5番は爆演。国際化が進んだ現代のオーケストラには、昔のようなステレオタイプな音の特徴というのは無くなってきていると思うのですが、ロシア・ナショナル管弦楽団の音色は、いかにもの大陸的、ロシア的響きに聴こえました。決して繊細なアンサンブルではないのですが、骨太で重厚。そして音が大きい。昭和的な市民会館の面影を残し、中規模で残響殆ど「0」のホールには不釣り合いぐらいの大きな生音が炸裂してました。この音圧は、在京オケではなかなか味わえないものです。ステージ後方に肩をすぼめるように並んだ大男揃いの金管陣が何とも可笑しかった。アンコールでは、ハチャトリアンの仮面舞踏会よりワルツを演奏してくれて、大団円のなか終演となりました。
唯一、残念だったのは、目立った空席の多さ。私が座った二階席は3割程度の入り。正直、来日オケでこれまでの空席は見たことありません。調布という立地の問題か、ロシア・ナショナル管弦楽団の知名度なのか、プロモーション不足なのか、原因は分かりませんが、遠路はるばるロシアから遠征してくれたオーケストラにも申し訳ない。そして、何より音楽祭の目玉公演の一つとしてはあまりにも寂しく感じました。ただ、客席の寂しさとは全く無関係に、オーケストラはとっても熱い演奏で、観衆の拍手も演奏に負けない大きなものであったのが救いでした。
ロシア・ナショナル管弦楽団
ミハイル・プレトニョフ 指揮/ピアノ
調布音楽祭特別公演
6月27日(土)14:00~
フェスティバルホール(グリーンホール 大ホール)
出演
ミハイル・プレトニョフ(指揮、ピアノ*)
ヴァディスラフ・ラヴリック(指揮*)
ロシア・ナショナル管弦楽団(管弦楽)
曲目
モーツァルト:ピアノ協奏曲第24番*
アンコール モーツァルト:ロンドニ長調K.485
チャイコフスキー:交響曲第5番
アンコール ハチャトリアン:仮面舞踏会よりワルツ