私にとっての夏休みの初日。上野の東京都美術館で開催中のポンピドゥー・センター傑作展に出かけた。1906年から1977年までの現代美術を一年ごとに一作家一作品で展示するというユニークな切り口だ。
現代美術については正直わからないことだらけだが、この切り口のおかげで、今年の展覧会ではマイ・トップ3に入るほど楽しめた。
一年一作家一作品という方針で、ピカソ、シャガール、マティス、カンディンスキーといった客寄せにはもってこいの芸術家も、(少なくとも私は聞いたことがなかった)ジョゼフ・クレパン、セラフィーヌ・ルイと言ったメジャーとは言えない芸術家も、平等に一点づつの作品展示である。このおかげで、全体の半分以上を占めた未知の芸術家たちの作品に多数触れることができた。しかも、1年1作品なので、時代を下るに従って、時代の雰囲気の変化も感じ取れる。凝った見せ方である。
もう一つ面白かったのは、作品とセットでその芸術家の言葉が紹介されていること。芸術家の言葉なので、哲学的すぎて一般人には正直、意味を測りかねる言葉もあったけど、言葉と作品をセットで味合うというのはなかなか深みのある行為である。一点、一点をじっくりと噛みしめたくなる。
建築家の田根剛さんによる会場の導線もユニーク。地下一階は斜めに、1階は段々に、2階は円形に廻るようになっていて、何度も通っている東京都美術館だが、まるで別の会場に来たような気になった。
作品としては、ピカソ、シャガール、マティスなどの巨匠系はもちろん目を引くが、個人的にはクリス・マルケルの28分ほどの白黒映像(大部分は静止画のつなぎ合わせ)「ラ・ジュテ」(1962年)のインパクトが大きかった。近未来のパリで、実験台として時間を行き来することになったとある男の物語だが、テリー・ギリアムの映画「12モンキーズ」にインスピレーションを与えた作品だという。テーマ、映像のつくりなど、大いに楽しんだ。
正直、造形系の作品は理解不能なものも多い。自転車の車輪を椅子につけたオブジェ、おしゃれだけど今ならどこにでもありそうな椅子、ただのロープ、何かか描いてあるのかもよくわからないただの白いキャンヴァスなどなど・・・。そういった作品を差し置いても、見どころ十分である。
お盆休み中ということもあってか、会場は余裕で自由に動き回れる空き具合。涼むつもりで良いので、ぜひ、足を運ばれることをお勧めしたい。何かしらの新しい発見があると思う。
《次はどの展覧会に行こうかな?》