パリのオルセー美術館とオランジュリー美術館所蔵品から100点を超えるルノアールの作品を展示した大ルノアール展。オルセーとオランジェリーは何度か行ったし、きっと絵よりも人を見に行くようなものだと、二の足を踏んでいたのだけど、思い切って行って良かった。充実の個展だ。
月並みだが、本展覧会の目玉である「ムーラン・ド・ラ・ギャラットの舞踏会」と2枚のダンスの絵「都会のダンス」「田舎のダンス」の3枚を見るだけで、十分に訪れる価値がある。
「ムーラン・ド・ラ・ギャラットの舞踏会」は初来日だそうだ。私は4年ぶりの再会だが、いつ観てもこの絵は本当に素晴らしい。生きている絵とは、まさにこの絵のことだろう。人々のお喋り、息遣い、笑い、音楽が聞こえ、人々が動いている。一瞬を切り取った絵なのに、動画を観ているようだ。この立体感は生で見ないと分からない。
《ムーラン・ド・ラ・ギャラットの舞踏会》
「田舎のダンス」は覚えていたが、「都会のダンス」は記憶が薄れていた。2枚の絵が並んで展示してあるが、その対照性に驚かされる。「都会のダンス」は、洗練さ、静けさ、冷たさ、不安を感じる。一方で、「田舎のダンス」は陽気さ、動き、明るさ、楽しさだ。同じサイズの等身大ぐらいのダンスの絵がこれほどの印象の違いをもたらす。1枚で観るよりも、2枚並べて観るのがより楽しい。
《都会のダンス》
《田舎のダンス》
もちろんこの3枚以外にも、ルノーアルの傑作が何枚もある。傑作ではないかもしれないが、今回、目を引いたのは、作曲家ワーグナーの肖像画。あの気難しそうなワーグナーでさえ、ルノーアルの絵筆にかかると、明るいただのおじさんになってた。
《ワーグナー》
私用で半日休みを取ったついでに立ち寄った。夏休みということで、平日の午前中だというのに親子連れも多く混んではいたが、びっしり、ぎゅうぎゅうという感じではない。立ち止まって、ゆっくり見ることもできた。人を楽しく、陽気な気分にさせてくれるルノーアルの絵は、やっぱり凄い。
お勧めです。