シニア社員が増えつつある職場において活用できるかなというのと、まだシニア社員と呼ばれるには早いがいずれは回ってくる自分にも役に立つかな、というスケベ心一杯で手に取った本だったが、深い内容持ったものだった。
80歳を超えた品格ある老人とまだギラギラ感を捨て切れない59歳のシニア企業戦士との出会い、親交、別れが、2人の対話を軸に物語的に描かれる。前半部分の対話は、老人のよろず相談だが、そのプロセスはシニア企業戦士がコーチングを受けることにより気づきを得る過程そのものだ(第1章のタイトルは「傾聴」!)。だが、だんだんとそれは老人と企業戦士の対話による相互プロセスに変化していく。そして、対話を追いながら、読者も「品格」について自然と自ら考えるようになっている。
印象的な言葉も多い。「使命などというものは考えて身に着けるものではなく、その生き様から自然と導かれるものだということであろう」、「老人の言う「品格」というものは彼の人生そのものよりも、その場その場での態度、役割を持って状況をどう受け止めるか、ということ」、「もし『シニアの品格』というものがあるとしたら、それはもっと自分から関心が離れていくものだと思うんです」、「私はやっぱり、大切なのは知性よりも、姿勢やまなざしだと思うんです」などなど。
読んでいて、数年前に亡くなったKさんを思い出して目が潤んだ。地元の英会話サークルで知り合い、「友人」となったが、たまたま大学の先輩であったこともあり、何かとお世話になった。押しつけがましいところのない自然な気配りと周囲の人へのリスペクトを持ち、70歳台であったが多方面にチャレンジを続ける方で、あのように歳を重ねたいと思ったものだ。私のロンドンに赴任中に、仕事でイギリスに来られた時にはわざわざ連絡を頂き、手土産まで持って来ていただいた。そんな私にとって「シニアの品格」の見本のような人生の大先輩は5年前に突然の発作で世を去った。
簡単に読める本ではあるが、自らを内省する機会を与えてくれる味わい深い一冊である。
【目次】
邂逅
傾聴
時間
強み
仕事
成長
自由
役割
仲間
約束
品格
未来