その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

新国立オペラ 「ルチア」/ガエターノ・ドニゼッティ (指揮 ジャンパオロ・ビザンティ)

2017-03-22 08:00:00 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)


 前半は、愛し合った男女が家の事情で結ばれないという、典型的メロドラマの展開でやや退屈。主要歌手陣のオルガ・ペレチャッコ=マリオッティ、イスマエル・ジョルディ、アルトゥール・ルチンスキーはいずれも一定水準以上なのだが、オケや合唱を含めた舞台としての一体感がどうも感じられず、ピントが合ってない写真を見ているようなもやもや感が残った。

 が、第2部第2部で大逆転ホームラン。ドラマ最大の山場である「狂乱の場」。泣く泣く政略結婚に応じたルチアが、結婚初夜に新郎を刺し殺し、気が触れてしまう。題名役のマリオッティの演技と歌が凄まじい。もともと美形で姫役にもってこいなのだが、白いドレスのような寝巻が返り血で赤く染まり、サロメばりに切り落とした新郎の首を槍のような棒で突き刺し、振り回す。やや乾いた声質ではあるが、高音が美しいマリオッティのソプラノは、緊張感たっぷり。更にそんなルチアに呼応するように、奏でられるグラス・ハーモニカの音は、「サロメ」でヨカナーンの首を求めるサロメの喘ぎ声を表現したとされる超高音コントラバスに似た緊迫感を演出する。トータルで15分はあると思われる場での独演なのだが、聴衆全員が固唾を飲み、信じられない静けさと張り詰めた空気が劇場全体を覆った。私も心臓バクバクで、このシーンを見られただけでだけで、この日この場に居られて良かったと心底思った。マリオッティの名演に大拍手。

 ピットに入った東フィルは後半持ち直したものの、前半は金管が不安定かつ切れも悪くもう一つ。また、このオペラ、前半は話のシリヤスさや暗さの割には、明るい音楽や美しい歌が多く散りばめられているのが、私にはアンマッチに感じ落ち着かなかった。まあ、終わりよければすべてよしということで。


2016/2017シーズン
オペラ「ルチア」/ガエターノ・ドニゼッティ
Lucia di Lammermoor / Gaetano DONIZETTI
全2部(3幕)〈イタリア語上演/字幕付〉
オペラパレス
【共同制作】モンテカルロ歌劇場

スタッフ
指 揮 ジャンパオロ・ビザンティ
演 出 ジャン=ルイ・グリンダ
美 術 リュディ・サブーンギ
衣 裳 ヨルゲ・ヤーラ
照 明 ローラン・カスタン
舞台監督 村田健輔

(指揮)
ジャンパオロ・ビザンティ

(演出)
ジャン=ルイ・グリンダ

キャスト
ルチア:オルガ・ペレチャッコ=マリオッティ
エドガル:イスマエル・ジョルディ
エンリーコ:アルトゥール・ルチンスキー
ライモンド:妻屋秀和
アルトゥーロ:小原啓楼
アリーサ:小林由佳
ノルマンノ:菅野 敦

合唱指揮:三澤洋史
合 唱:新国立劇場合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
【グラスハーモニカ】サシャ・レッケルト


2016/2017 Season
NEW PRODUCTION

Music by Gaetano DONIZETTI
Opera in 2 Parts (3 Acts)
Sung in Italian with Japanese surtitles
OPERA HOUSE

Staff
Conductor Giampaolo BISANTI
Production Jean-Louis GRINDA
Set Design Rudy SABOUNGHI
Costume Design Jorge JARA
Lighting Design Laurent CASTAINGT

Cast
Lucia Olga PERETYATKO-MARIOTTI
Edgardo Ismael JORDI
Enrico Artur RUCINSKI
Raimondo TSUMAYA Hidekazu
Arturo OHARA Keiroh
Alisa KOBAYASHI Yuka
Normanno KANNO Atsushi

Chorus New National Theatre Chorus
Orchestra Tokyo Philharmonic Orchestra
Glass Harmonica Sascha RECKERT

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