その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

冨山和彦 『AI経営で会社は甦る』 (文藝春秋、2017)

2017-10-09 09:00:00 | 


 書籍としては既読感のある内容も多くイージーな作りに見えるが、富山氏らしい時代の本質を掴むような指摘も十分あり参考になった。

 私にとって、本書で目新しかったところは、本書の前半部分で展開されるAI時代が日本企業に与える影響。「AIの時代になって、デジタル革命がバーチャルな世界で完結するカジュアル(C)なB2Cの時代から、リアルでシリアス(S)な自動車、医療、サービス産業に波及し、量的・質的なブレークスルーが起こること」(いわゆるデジタル・トランスフォーメーションをわかりやすく解説)そして、「そこではハードとソフトの擦り合わせ・融合が必要となるため、日本企業が得意とする分野であり、デジタル革命に乗り遅れた感がある日本企業もまだまだ挽回できる」というところ。マクロな視点での指摘なので、読者は自分で自分の言葉で咀嚼しないと一般論で終わってしまうので、立ち止まって考えてみよう。

 さらに後半部分も参考になった。自分なりに要約すると、「日本企業の挽回のためには、優秀な人材の登用とそれを支える経営システムが重要となる。そのためサラリーマン型とプロ集団向けの1国2制度は不可欠となってくる。また、プロ集団をマネジメントするのはプロにしかできないが、かといって、プロ経営者といわれる人は、今求められている、10年単位でかかるようなサラーリマンDNAを入れ替えるといった経営改革は苦手であるので外から連れてくればいいというものはない」。

 後段に、オックスフォード大で研究生活を送る川上和也氏からのレポートが全文引用されているが、ここでいわれている技術とビジネスの組み合わせというのが、本書の肝であると思う。日本の技術者はここだけでも読みべきだ。

 筆者のいう通り、このリアルでシリアスなAI時代で日本企業は再びイノベーションの旗手となりうるのか?この1,2年で結果は出てしまうだろう。


【目次より】

◆はじめに AI時代の経営とは
技術的にスゴいことと儲ることは違う
L(ローカル)の風とS(シリアス)の風をつかめ
WhatよりもWhen,How,Whoの勝負

◆第1章 これがAI革命の真相だ
デジタル革命が「バーチャルの世界」から「リアルの世界」へ
「稼ぐ」構造が根こそぎ変わる
産業革命の核心はAIの進化と「S(シリアス)の世界」
大自動化革命ではタブーの少ない日本に勝機あり
オープンイノベーションとブラックボックス化
日本の自動車メーカーは生き残れるか

◆第2章 なぜ日本企業が有利なのか
ハードとソフトの融合が焦点に
ハイブリッド経営システムを構築せよ
モノづくり日本にチャンスあり
ローカル型産業、中小企業にはもっと巨大なチャンス到来
ターゲティング型の産業政策はもはや通用しない

◆第3章 日本企業がとるべき戦略
天才技術者を雇うには
一国二制度で異質なものと共存する
プロ経営者の改革がうまくいかない理由
リアルキャピタルからヒューマンキャピタルへ
産学連携で人を育てる

◆第4章 AI時代のリーダー像・働き方
分断される「Gの世界」と「Lの世界」
真のグローバル人材を目指すには
AI時代に残る仕事、なくなる仕事

◆おわりに 千載一遇のチャンスをつかめ
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