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私にとって「幻想交響曲」と言えば、デュトアさん。もう10何年も昔だと思うが、デュトアさんが音楽監督時代にN響定期で聴いて超感動し、モントリオール交響楽団とのCDも何度も聴いている。あの色彩豊かで、ドラマティックで、夢の世界のようなデュトアの「幻想」は常に個人的にデフォルトでした。そのデフォルトが上書きされるような演奏が今回のブロム翁の音楽でした。
どんな音楽でも余計な装飾はせず、音楽を音楽としてその良さをしみじみと聴かせてくれるブロムシュテッドさんがどんな「幻想」を聴かせてくれるのか、N響ファンなら誰しもが期待感一杯だったに違いありません。そして、その期待を少しも裏切らない、素の「幻想」があったと思います。
第一楽章からサクサクと音楽が進み、第2楽章のワルツも駆け抜けるようなスピード感。ただ、第3楽章も含めて、それがあっさりしているとか、軽いと感じることはなく、名手揃いのN響奏者が奏でる音は、ひたすら純で美しい。そして、第4楽章の断頭台への行進、第5楽章の第5楽章〈ワルプルギスの夜の夢〉の後半は、ガラッと雰囲気を変えて、低弦を初めとした凄まじい魔性は地獄の叫びのよう。ベルリオーズが抱いた幻想が目前で展開された50分余りでした。
3階席からオペラグラスで覗いていても、N響メンバーの気合が手に取るように分かります。キュッヒルさんに率いられた弦パートはもちろんのこと、木管、金管それぞれが最大限の力を振るい、まさに個の力がぶつかって、最大のチームの力が生まれる。なかなかこういう演奏には出会えません(正直、この気合が、東京春祭の「ローエングリン」では私には感じ取れなかったです)。
90歳というブロム翁。その気力、音楽はますます凄みを帯びてきているような気さえします。迎える拍手、演奏後の拍手も、ブロム翁には特に暖かい。とっても良い雰囲気のNHKホールでした。
ちなみに、前半のベルワルドの交響曲 第3番 ハ長調「風変わりな交響曲」は、ベートーヴェンの影響を強く受けているというベルワルドの交響曲。N響の合奏力が遺憾なく発揮された、こちらも名演でした。
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《今年は緑が早い》
第1882回 定期公演 Aプログラム
2018年4月15日(日) 開場 2:00pm 開演 3:00pm
NHKホール
ベルワルド/交響曲 第3番 ハ長調「風変わりな交響曲」(ブロムシュテット校訂版)
ベルリオーズ/幻想交響曲 作品14
指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット
No.1882 Subscription (Program A)
Sunday, April 15, 2018 3:00p.m. (doors open at 2:00p.m.)
NHK Hall Access Seating chart
Berwald / Symphony No.3 C major “Sinfonie singulière” (Ed. by Blomstedt)
Berlioz / Symphonie fantastique op.14
Herbert Blomstedt, conductor