江戸時代初期の画家、俵屋宗達の一生を描いた小説。物語として面白く、かつ日本美術のお勉強にもなる。
伝記としては、どこまでが史実でどこまでが創作なのかは分からないが、扇屋「俵屋」に養子として入りながらも、時代の文化人の本阿弥光悦や宮中文化を代表する教養人の烏丸光広との交流を経て、画家として力をつけていく宗達の一生は魅せられる。
また、個人的には、嗜みが無い日本美術の良きガイドともなった。小説の中では、「平家納経願文見返し」、「嵯峨本」、「鴨下絵三十六歌仙和歌巻」、「舞楽図屏風」、「関屋澪標図屏風」、「白象図」、「鳶の細道図屏風」、「風神雷神」、「鶴下絵三十六歌仙和歌巻」などいくつもの安土桃山時代から江戸時代初期の美術品が登場する。日本美術はぼんやりと眺めるだけで、何をどう見たらより理解できるのかが良く分からない自分には、作品のこだわり箇所、優れた点などを理解する、大きな助けになった。ガイド本を読んで左脳的・論理的に理解するよりも、より右脳的・感覚的に理解できるような気になる。
強くお勧めできる作品だ。