その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

劉 慈欣 (著),大森 望 (訳)ほか 『三体』(早川書房、2019)

2020-09-09 07:30:00 | 

読書好きの友人のお勧めで読んでみた。「三体運動」を題材に、人類と地球外生命体との接触を描いたスケールの大きな中国発のSF小説。アマゾンによると「アジア圏の作品として初のヒューゴー賞長篇部門に輝いた、現代中国最大のヒット作」とのことである。図書館でリクエストしたのだが、廻って来るのに半年かかったので、日本でも相当の人気のようである。

最近こうした宇宙スケールで物事を考えたりしたことが無かったので、新鮮で刺激的な一冊だった。私自身、毎日毎日、様々な自然、社会、人間環境等に影響を受けて生きているが、宇宙の時空の中では、塵にすらならない小さなことである。本小説の題材やストーリーには直接は関係しないものの、自分自身の「存在」について振り返えさせられる。

中国の文革期を出発点とし現代ではあるが時代設定不明な舞台設定、各登場人物の強い個性、ストーリー展開の巧みさ、物理学・宇宙学の応用、人類社会への問題提起等、エンターテイメントだけでなく知的な好奇心も刺激される。読者によって色んな読み方ができるだろう。

ただ、物理学の知識・理解が欠落している自分に果たしてどこまで本書の理論的なところが理解できているのかは全くもって自信がない(というか分かってないと思う)。なので、どこまで本書の科学的記載が正確なのかがわからない。

原作の単行本発刊が2008年。英語版が2014年に出て、2015年にヒューゴー賞を受賞し、日本語訳の出版は昨年の2019年である。ユヴァル・ノア・ハラリ氏の『サピエンス全史』、『ホモ・デウス』を読んだ際も、原著から英訳を経て日本語訳に辿り着くまで数年かかっているのにかなりがっかりしたのだが、本書はエンターテイメント小説とは言え、グローバライゼーションが進んだこの現代世界において、こうした優れた世界的ベストセラーの知見に触れるのに数年も遅れるというのはかなり残念なことだ。これからの世の中、英語、中国語で直接の情報に触れていく努力が必須だと思う。

本書は「三体」三部作の第一作とのことである。本作は、先日、Netflixが映画化するとの報に接したが、さすがNetflixだ。まずは、予約済みの二作目が廻って来るのを気長に待つことにする。

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