2月16日の演奏会(パーヴォ/ブルックナー交響曲第7番ほか)以来、7カ月ぶりのN響コンサートである。当時、まさか次が9月になるなんて全く想像できなかった。決して私のホームグランドとは呼べないサントリーホールだが、ホール内に入ったときは不思議に胸が熱くなった。
下野さんとN響の3曲、1時間ちょっとのショート・コンサートである。観客も座席を一つおきに空けての着席なので、満員時の半分以下だ。それでも、普段ない、奏者入場とともに起こった大きな拍手は、苦境を耐えてきた奏者たちへの敬意・労いとこの場にいる観衆自身の嬉しさが表れたものだった。
1曲目はシューマン「4本のホルンのための小協奏曲」。N響ホルン隊の名手たちが美しいハーモニーを奏でる。うっとりとする美しいアンサンブルに、不本意ながらそのままあちらの世界に行ってしまった。実に勿体ない、悔しい。
2曲目のコダーイの「ミゼレーレ」も綺麗な和音を味わえる曲だった。そして、休憩ないまま、シューマンの交響曲第4番。下野さんの端正かつ熱い指揮とN響の精緻なアンサンブルが絶妙に組み合わさった名演だった。聴き込んである曲でないが、耳に馴染みやすいメロディがとても心地よい。
今回はLAエリアでオケの斜め後方からの鑑賞だった。ステージに手が届く様な距離なので、N響の発する音がダイレクトに体にぶつかってくる。何という快感だろう。全身で音楽を受け止めるこの感覚は、どんなにお金をかけたオーディオルームでも味わえまい。これこそ生の音楽を現場で聴く醍醐味だ。きっと、観衆の皆もそう思っているに違いない。終演後の拍手は、とても観客数を半数以下に抑えているとは思えない、大きく、暖かい拍手だった。
この日を皮切りに「演奏会のある日常」が戻ってくるのだろうか?心の底から、それを願ってホールを後にした。
NHK交響楽団 9⽉公演 サントリーホール
2020年9月24日(木)7:00pm
サントリーホール
指揮:下野竜也
ホルン:N響ホルン・セクション
(福川伸陽、今井仁志、勝俣 泰、石山直城)
シューマン/4本のホルンのための小協奏曲 ヘ長調 作品86
コダーイ(下野竜也編)/ミゼレーレ
シューマン/交響曲 第4番 ニ短調 作品120
NHK Symphony Orchestra September Concerts at Suntory Hall
Thursday, September 24, 2020 7:00p.m.
Suntory Hall
Tatsuya Shimono, conductor
Horn Section of NHKSO, horns
Nobuaki Fukukawa
Hitoshi Imai
Yasushi Katsumata
Naoki Ishiyama
Schumann / Konzertstück for 4 Horns F Major Op. 86
Kodály (Shimono) / Miserere
Schumann / Symphony No. 4 D Minor Op. 120