新型コロナウイルスの対応で会期が変更されたロンドン・ナショナル・ギャラリー展に行ってきました。春には展覧会そのものの中止を覚悟していただけに、本当にうれしい開催です。まずは、関係者の方々に大感謝。
個人的にナショナルギャラリーは、ロンドン駐在時に通勤ルート上にあったし、入場無料(訪問による寄付受付はあり)かつ金曜日は夜9時まで開館していたこともあって、何度も足を運んだので思い出がいっぱい詰まっています。なので、この東京出張美術展は何よりも楽しみにしていました。
どの作品も初来日と言う、ルネッサンスから印象派に至るまでの作品60余りが展示されています。時間指定制のためか、コロナで外出を控えている方が多いためか、理由は分かりませんが、金曜用夕刻の時間帯はゆっくり、ゆったりと思い思いに鑑賞できる素晴らしい環境でした。
入場すると最初にルネサンス絵画のコーナーが。クリヴェッリ《聖エミディウスを伴う受胎告知》を始め、力作が並びます。ここの10枚程度でも、もう満足と思うぐらい。オランダ絵画のコーナーのレンブラントの自画像も久しぶりの再会です。レンブラントのたくさんの自画像の中でも、この絶頂期の自身を描いた1枚はひときわ自信にあふれていて力強い。また、ターナーの《ポリュフェモスを嘲るオデュッセウス》も久しぶりでしたが、日本語の解説を読んで、以前は見過ごしていた細部にも目が届き、こんなものがこんなところに描かれていたのかと感心。ナショナルギャラリーでも私の大好きなイギリス風景画家のコンスタブルの絵も1枚「レイノルズの墓標」があったのも嬉しかった。そして、最後には、ゴッホの「ひまわり」が。ナショナルギャラリーの中に居ると、あまりにも傑作が多すぎて、「ひまわり」でさえあまり目立たたないのですが、今回はじっくり鑑賞でき、その絵具使いや迫力を堪能しました。
あえて言うと、60数枚でルネッサンス以降の西洋美術史を概観するということで精選はされているのでしょうが、つまみ食い的な印象は残ります。もう少しテーマを絞って、集中的に深く見せる展示もあるのかなと思いましたが、幅広くエッセンスを楽しんでもらうという点では、こうした展示の方が良いのかもしれません。
足しげく通った身からすると、「まだまだ、ナショナルギャラリーこんなもんじゃないよ」という思いはありますが、こうしてロンドンにある美術品を鑑賞できるだけでも素晴らしい。このコロナ騒ぎ何時になったら安定するのか、また今度ナショナルギャラリーに行けるのは何時なのか、といった思いが錯綜しながら、美術館を後にしました。
〈構成〉
第1章 イタリア・ルネサンス絵画 の収集
第2章 オランダ絵画の黄金時代
第3章 ヴァン・ダイクと イギリス肖像画
第4章 グランド・ツアー
第5章 スペイン絵画の発見
第6章 風景画とピクチャレスク
第7章 イギリスにおける フランス近代美術受容