10月のN響演奏会に足を運んだ。2月以来のNHKホールである。毎月、NHKホールに向かう途中で、代々木公園の木々を見て季節を感じている私には、春・夏をすっ飛ばしていきなり秋を迎えたような気にさせられる。
10月は3つのプログラムが鈴木雅明氏の指揮で用意された。BCJで世界的な名声を確立している鈴木氏による3つの演奏会なんて、コロナ禍ならではの瓢箪から駒と言うか、不幸中の幸いである。
この日のプログラムは、ハイドン交響曲101番、モーツァルトの交響曲第39番といずれも、代表的古典派の作曲家の後期の交響曲で、プログラムもなかなか通常期には味わえない。
バッハの大家である雅明氏なので、バッハとの連続性を意識させるような演奏になるのかと思っていたのだけど、全くの反対でその後のベートーヴェン等に続いていく交響曲のあけぼのを感じるスケール感のある演奏だった。彫が深く、切れが良いN響のアンサンブルは実に小気味よい。感染防止の観点から座席も両隣を開けての配席なので、人が少なくホールの響きもNHKホールとは思えないほどよく響く。満席のNHKホールが懐かしむ気持ちはあるが、こういうゆったりした空間で、余裕をもって古典派の音楽を味わうというのも、とっても贅沢だ。
2曲で1時間余りの演奏会だが、終わった際はとても充実感を感じるものだった。来週のシューベルトのプログラムも楽しみである。
NHK交響楽団 10⽉公演
2020年10月18日(日)3:00pm
NHKホール
指揮:鈴木雅明
ハイドン/交響曲 第101番 ニ長調 Hob. I-101「時計」
モーツァルト/交響曲 第39番 変ホ長調 K. 543