単行本の発行は2008年だから10年以上前の作品。家人によると、かなり有名なミステリーとのことで、映画化もされている。確かに、読み始めたら止まらない。冷や汗流れ、背筋が寒くなる読書体験だった。
中学校のプールで水死した幼児の死を巡って、子どもの母親である女教師、犯人である二人の生徒、そして夫々の家族が絡んでいく。事件を通じて、人間の弱さや身勝手さ、愛が描かれる。
登場人物が皆、ギリギリのところに追い込まれていく。ストーリーの吸引力に感服する一方で、「嫌なところを突いてくるなあ~」とページをめくる手は、決して勢い良いものとはならなかった。怖いもの見たさ的に躊躇する気持ちとともに一気に読み進めた形である。そして幸せに終わる人はどこにもいない。
直樹の動機など一部腑に落ちない点もなくはない。でも、久しぶりに読んだヘビーなミステリーだった。得た教訓は、他人を理解した気になってはいけないということだ。人は他人の思惑や理解の及ばないところで考え行動する。そうした「学び」もあり、本書は「エンタメ小説」を越えている。映画も観てみたい。