その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

東京二期会オペラ劇場 パルジファル〈新制作〉/ヴァィグレ、読響 @東京文化会館

2022-07-18 09:37:55 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

〈ペレアスとメリザンド〉(新国立劇場)と並んで、本年のオペラの大きな楽しみにしていた〈パルジファル〉。公演初日に出かけた。席は4階の左サイドだが、センターに近い席で舞台が良く見えた。ワーグナーオペラの中でも屈指の演目で、しかも上演機会も多くないので超満員かと思っていたら、入りは7割ちょっとぐらいだったのは意外。

4時間半近い大作であるが、長さを全く感じさせない優れた公演だった。特にオール日本人キャストによる歌手陣とヴァィグレ/読響の熱演が光った。歌手陣は特に抜きん出たと感じた歌手はいなかったが、夫々が集中力に満ちた安定した仕事っぷり。オール日本人でもここまでのパルジファルが演じられるんだなあと、素直に感心した。

読響/ヴァィグレは、金管に乱れがあったものの、劇性に富んだ迫力ある演奏で〈パルジファル〉の世界観を堪能できた。4階席にも音がダイレクトに飛び込んできたが、非常に良く鳴っていた。時折、鳥肌が立つような弦楽器の美しい響きが印象的だった。

宮本亞門さんによる演出は非常にユニーク。舞台設定を現代の博物館に設定したり、少年パルジファルと母親を黙役で登場させたり、謎のゴリラ(類人猿?)が現れたり、宇宙視点での地球を映像で投影させたりで、仕掛けに富む。夫々の仕掛けについて、演出家の狙いが何なのかを考えるのも楽しい。一方で、演出が能弁、饒舌過ぎないかとの思いが終始あった。神聖な楽劇であるパルジファルにここまでの仕掛けが果たして必要なのかの疑問は拭えない。忙しく、メッセージ性多い演出が、かえって歌手とオケの熱演に水を差している気までする。個人的好みからは距離あった。

演出に違和感はあったものの、名作を充実したパフォーマンスで鑑賞できた時の満足感はひとしおだ。音楽が脳内をリフレインするまま上野を後にした。

 

《二期会創立70周年記念公演》

フランス国立ラン歌劇場との共同制作公演
東京二期会オペラ劇場

パルジファル〈新制作〉
オペラ全3幕
日本語および英語字幕付き原語(ドイツ語)上演
台本・作曲:リヒャルト・ワーグナー
会場: 東京文化会館 大ホール
公演日:2022年7月13日(水) 17:00
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スタッフ

指揮: セバスティアン・ヴァイグレ
演出: 宮本亞門
   
装置: ボリス・クドルチカ
衣裳: カスパー・グラーナー
照明: フェリース・ロス
映像: バルテック・マシス
   
合唱指揮: 三澤洋史
演出助手: 三浦安浩,澤田康子
   
舞台監督: 幸泉浩司
公演監督: 佐々木典子
公演監督補: 大野徹也

キャスト

配役 7月13日(水)15:00 
アムフォルタス :黒田 博
ティトゥレル:大塚博章
グルネマンツ:加藤宏隆
パルジファル:福井 敬
クリングゾル:門間信樹
クンドリ:田崎尚美
第1の聖杯の騎士 :西岡慎介
第2の聖杯の騎士 :杉浦隆大
4人の小姓 
 清野友香莉
 郷家暁子
 櫻井 淳
 伊藤 潤
花の乙女たち 
 清野友香莉
 梶田真未
 鈴木麻里子
 斉藤園子
 郷家暁子
 増田弥生
天上からの声 
 増田弥生
合唱: 二期会合唱団
管弦楽: 読売日本交響楽団

コメント
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