その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

鈴木優人×イザベル・ファウスト NHK交響楽団 @調布国際音楽祭

2024-06-24 07:11:54 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

昨年は都合つかず訪れること叶わなかったけど、12年目を迎えるという調布の音楽祭に今年は参戦です。有料の演奏会も年々充実し、選ぶのに迷ってしまうのですが、今年はイザベル・ファーストさんが出演されることもあり、この音楽祭の顔でありエグゼクティブプロデューサーである鈴木優人さん指揮のN響の演奏会へ。

初っ端から、今日の目玉とも言えるファウストさんが登場。数日前にB定期のサントリホールで聴いたばかりですが、その時はシューンベルグのヴァイオリン協奏曲が私には難しすぎて、せっかくのファウストさんの真価も堪能し切れず。今回はベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲。聴き慣れた曲でもあり、期待大でした。

そして、期待通りの素晴らしい演奏でした。ファウストさんのヴァイオリンの音色は繊細で、様々な要素の最高のバランスの上に成り立っているように聴こえます。とっても知的でありながら、情熱的でもある。柔らかくもあれば、堅実さを見せることもある。愁いがあれば、歓びにも満ちている。発せられる一音一音に耳をそばだてます。音が不思議なほど素直に、体の中にしみ渡って行くような感覚でした。

彼女にとってはこれまで何百回、何千回と演奏した曲だとは思うのですが(それでも譜面台に楽譜が置いてあったのはちょっと不思議でした)、私にはまさに一期一会のファウストさんによるベートーヴェンのヴィオリン協奏曲。背筋伸ばして、手を握りしめて聴きました。

N響の演奏も素晴らしい。特にファウストのヴィオリンと木管陣の柔らかな音色が、ホール内で溶け合う化学反応にはうっとりと別次元に連れて行かれるようでした。第一楽章後半のカデンツァではティンパニーの伴奏が入りました。

終演後はこのホールでは聞いたことのないボリュームでの、賞賛と感動の拍手で会場は覆われました。ファウストさん、ヴァイオリンの素晴らしさは言うまでもありませんが、拍手に応える姿やオーケストラへの賞賛などの仕草もとってもチャーミング。大拍手に応えてアンコールはシャルル・オーギュスト・ド・ベリオ作曲12の情景作品109第12番コンソレーション(なぐさめ)でした。

後半は、B定期と同じ曲目ですが、私は定期の後半を聴けなかったので、丁度良かった。ラストのシューベルト交響曲第5番は全く初めて聴く曲でしたが、構造もはっきりして、音楽としてもとっても聴き易い楽曲。N響の弦のアンサンブル力や管楽器の美しい音色を堪能しました。

鈴木Jr.(お父さんも聴きに来られてました)もご自身がエグゼクティブプロディーサーとなっている調布国際音楽祭で、N響を自ら指揮されるということで、いつも以上に気合入っているように見えました。マルチな才能を見せる鈴木さん、これからも音楽祭の充実を期待したいと思います。

蛇足ですが、今回、ファーストさんということで、最高ランク席を購入。前から10列目という両席だったこともあり、市民ホールではありますが、細部のニュアンスを含めとっても良く聴こえました。正確に数えたことは無いけど、N響には過去100回以上の演奏会に足を運んでいるはずですが、指定席はNHKホールの3階席とサントリーの舞台後ろ席なので、う~ん、やっぱり高い席は高い席ならではのことがあると納得。回数減らして良席を取りに行くのが良いのか、安席で回数を楽しむのか、悩んじゃいますね。

 

鈴木優人×イザベル・ファウスト
NHK交響楽団 in Chofu

2024年6月23日(日)開演 2:00pm [開場 1:15pm]
調布市グリーンホール 大ホール

ベートーヴェン/ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品61
バッハ(ウェーベルン編)/リチェルカータ
シューベルト/交響曲 第5番 変ロ長調 D. 485

指揮:鈴木優人
ヴァイオリン:イザベル・ファウスト

Sunday, June 23, 2024 2:00p.m.
Chofu City Green Hall, Large Hall

Conductor : Masato Suzuki
Violin : Isabelle Faust

Beethoven / Violin Concerto D Major Op. 61
S. Bach / Webern / Ricercata
Schubert / Symphony No. 5 B-flat Major D. 485

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