宮本輝氏のライフワークとも言える『流転の海』シリーズの第七部が発刊されたので早速読んだ。
第一部が刊行されてから30年が経つという本シリーズだが、著者のあとがきによると第九部で終わりになるということで、いよいよ後半である。第六部「慈雨の音」が比較的淡々と物語が進んだのに対し、本部はクライマックスに至るまでの波乱を予感させる変化が起こる。昭和36年という高度成長まっただ中の時代の空気、大阪の街の匂いを嗅ぎながら、登場人物達の汗、癖、運命を感じ、次は何が起こるのか、胸を躍らせながらページをめくる楽しさを味わえるのは、本書ならではある。
既に第八部の執筆にかかっているそうだが、早く読みたくもあり、終わりに近づくのが寂しくもある大作だ。