年明けの1月7日に訪れたので、3ヶ月遅れのエントリーになりますが、箱根のポーラ美術館でおすすめできる企画展が5月19日まで開催中なので、今更ですがその時の感想をアップします。
毎年、お正月が明けた最初の日曜日に「ギャラリートーク駅伝」というイベントが開催される(一時期、コロナでお休み)ので、都合がつく限り行くようにしている。ポーラ美術館の学芸員の方が襷をつないで、選りすぐりの1枚を解説してくれるイベントだ。午前中は、開催中の企画展「モダンタイムスインパリ in 1925」の展示作品を中心に紹介された。
この企画展は、第一次世界大戦からの復興によって急速に工業化が進み、「機械時代」(マシン・エイジ)と呼ばれる華やかでダイナミックな時代を迎えたパリが舞台。美術における機械の受容について探求する。「1920-1930年代のパリを中心に、ヨーロッパやアメリカ、日本における機械と人間との関係をめぐる様相を紹介」(企画展HP)したものである。学芸員さんによると、産業機械に美しさ(芸術性)を求め始めた時代であり、第1次世界大戦後の大衆文化とモダニズムの時代である。
第1区は自動車。自動車や航空機が普及しはじめ、機械が何なる手段・道具としてではなく、そのデザインや美しさが追及され始めた時代だという。第3区はノルマンディ号のポスター。また、1900年前後のアールヌーボーの様式と1925年当時のアールデコの様式や時代背景の違いなど、ォ恥ずかしながら知らないことも教えていただいた。
展示作品は、絵画を中心としつつも、映像、ポスターや模型、ガラス工芸品、合金ロボット模型、パソコンを使ったメディアアートなど多種多様で、企画そのものがとっても興味深い。ギャラリートークの第1区では学芸員さんから、エットーレ・ブガッティの車模型「ブガッティ タイプ52(ベイビー)」が開設された。この時代は、自動車や航空機が普及しはじめ、機械が何なる手段・道具としてではなく、そのデザインや美しさが追及され始めた時代だという。
第3区はA.M. カッサンドルのポスター「ノルマンディー号」(第2区はポーラ美術館の建築について)。破格の大型客船の宣伝ポスターがいかにその大きさを表すための工夫がなされているかとかが説明された。第4区は、河辺昌久「メカニズム」。シュールレアリズムを機械文明に対する「人間の意識の下に閉じ込められている無意識」に光を与える運動として、日本での展開を紹介。コラージュがかかった作品の読み解きが楽しい。そして、第5区では、空山基のロボット、ラファエル・ローゼンダールのウッブ・サイトが紹介された。
エットーレ・ブガッティ「ブガッティ タイプ52(ベイビー)」
空山基 Untitled_Sexy Robot type II floating (中央)/ Untitled_Sexy Robot_Space traveler (左右)2022年
恥ずかしながら、1900年前後の自然で曲線的な「アールヌーヴォー」様式と、1925年当時の都会的で直線的な「アールデコ」の違い(しかも「アールデコ」は後世の命名)や、アンチ機械としての「シュールレアリスム宣言」(1924年)といったことも初めて知った。時代と芸術の関係史のお勉強になる。
また、こうした20世紀前半の機械文明の興隆を振り返ると、必然的に「今」に目が行く。今のAI、特に生成AIらの新しいテクノロジーの隆盛は、芸術活動や人間・社会にどのような影響を与えるのか。100年後に、今回の企画展のような、AIと芸術、AIと人間・社会の新しい関係を振り返る展示会が行われたら、どんな展示になるのだろうか。そんなこともつらつらと考えた。
これから新緑が美しい箱根。ゴールデンウイークにでも足を運ばれることをお勧めします。
余談ですが、4月1日から強羅~ポーラ美術館間に無料送迎バスが運行開始するとのこと。1日13往復もしてくれるそうなので、アクセスもぐっと良くなりそうです。
※帰路は小田原によって、お刺身定食