その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

N響定期4月Aプロ、指揮:マレク・ヤノフスキ、ブラームス交響曲第1番ほか

2024-04-16 07:35:10 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

東京春祭から続いたヤノフスキ翁(以下、敬意をもって翁)とN響の今シーズン最後のプログラムです。翁のドイツ・オーストリアプログラムという期待もあってか、NHKホールはほぼ満員の入り。昨年のルイージさんの2000回記念定期並みの熱気でした。

前半のシューベルトの交響曲第4番。実演に接した経験は数回しかなく、この音楽がなぜ「悲劇的」なのかは、未だ私にはよくわかってません。プログラムには「モーツァルトの短調の交響曲にも通じるような古代ギリシア悲劇の基調を成す崇高な悲しみが、彼の念頭にあったと考えられる」と解説されています。確かに暗い基調に感じられるところもありますが、むしろ私には若さと瑞々しさがほとばしっている音楽に聞えます。自分の音楽リテラシーの無さをさらけ出すようで、お恥ずかしいですが・・・。

演奏は、翁らしく無駄なく質実剛健です。前回コロナ禍の特別演奏会で聴いた鈴木パパ指揮の同曲よりも、重厚な作りの印象でした。が、決して悲しいというよりは、がっちりと堅牢に組み立てられている構造的な美しさが引き立っていました。

休憩挟んで、さあ、後半のブラームス交響曲第1番。N響でも十八番のレパートリーだと思いますが、今回のブラームス1番は今までの誰が振ったのとも違ってました。音が引き締まって密度が高い。音楽に修飾を感じず、無駄なく漏れなく流れていきます。節々にテンポの振れはあるのですが、日頃聴き慣れたロマンティックで情感ある1番とは異なった、似て非なる1番に聴こえます。

個人的には、第2楽章と第4楽章が痺れました。第2楽章は磨かれ抜いた美しさを感じます。差し詰め、純米大吟醸酒という感じ。(吉村さんのオーボエも普段以上に引き立ってました)第4楽章は後半に進むにつれて圧を増し、フィナーレへ進む怒涛の勢いは血気迫ります。翁は85歳とは全く思えないほどエネルギーと気迫に溢れ、その前傾姿勢はオーケストラに挑みかかる虎のよう。この迫力、どこから生まれてくるのでしょうか。3階席から背中を見てるだけで怖いですから、近くにいる団員の方は一体どんな気持ちなんでしょうね。サントリーホールのP席で見て、聴いてみたい。

聴きながらが、決して私が馴染んで好きなブラームスではないが、凄いものを、今、ここで聴いているという実感が確かにありました。ここでこんな楽器がこう鳴っているのかとかの発見もあり、好みとの違いは感じながらも、ぐーっと引き込まれるものがありました。N響メンバーの必死さ、集中力、熱気も手に取るように伝わる、有無を言わせぬ名演です。

終演後は久しぶりのNHKホールいっぱいに広がる拍手とブラボー。わかりますねえ~。同じ時間、空間を共有する聴衆としてもとっても嬉しいです。

余談ですが、この演奏会後の「X」での聴衆の皆さんからのポストが賛否両論でとっても興味深いものでした。一つ一つのポストを読みながら、なるほどこう聴きとるのか、この感じたのか・・・と、いつも漫然とユルユル聴いている私としては、音楽の聴き方についての勉強になりますし、音楽の奥深さを感じます。

定期公演 2023-2024シーズンAプログラム
第2007回 定期公演 Aプログラム
2024年4月14日(日) 開演 2:00pm [ 開場 1:00pm ]

NHKホール
指揮:マレク・ヤノフスキ

シューベルト/交響曲 第4番 ハ短調 D. 417「悲劇的」
ブラームス/交響曲 第1番 ハ短調 作品68

 

Subscription Concerts 2023-2024Program A
No. 2007 Subscription (Program A)
Sunday, April 14, 2024 2:00pm [ Doors Open 1:00pm ]

NHK Hall

Schubert / Symphony No. 4 C Minor D. 417, Tragische (Tragic)
Brahms / Symphony No. 1 C Minor Op. 68

Artists
Conductor: Marek Janowski

コメント
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