6月15日(月) 知床ネイチャーオフィスが主催する知床自然体験一日コース参加。前夜チェックイン時に案内を渡され、8時25分にロビー集合の確認と注意事項そして担当の藤川友敬さんの簡単な自己紹介がされていた。
シーズン少し前で参加者はカップルと女性2名と我々3名の計7名だった。ワゴン車で知床ネイチャーオフィスに行き、簡単な手続きと改めての説明を受ける。午後からの原生林ツアーには長靴とレインウェアーを必着との事でサイズ合わせをする。
知床自然センターの裏手からよく整備されたフレペの滝散策コースを進む。藤川さんは小鳥等の自然の声を聞いて欲しいと熊よけの鈴などはつけずに歩いた。増えすぎた鹿害で皮を剥がされた木が見られる林の中を少しの間歩き、草原状の見通しのよい所に出るとそこはササやハンゴンソウそしてワラビの群生地だった。
前日クルーザーから眺めたフレペの滝は流れ込む川が無く途中の岩場から地下水が流れ落ちており水量は多くない。楚々とした滝で乙女の涙の別名もある。ウミネコやオオセグロカモメそしてウミウなどが舞う湾の岩場は鳥たちの糞で白くなっている。ハマエンドウの赤紫の群生も見えた。晴れていれば見渡せる知床連山は残念ながら灰色の空に塗りこめられていた。
フレペの滝と岩場に赤い花を咲かせるハマエンドウ
復路はエゾハルゼミが寒さの為かほとんど動かない姿やキセル貝の仲間のエゾカタツムリなどを観察しながら歩いた。昭和41年に最後の農家が集団離農し開拓が終わったといわれる跡地には一升瓶が散乱していた。木の実を採取して食料として保管するのに使用したので決して飲んだくれていた訳ではないという。その後植樹されたまだ1m位のアカエゾマツを見て熊の冬眠窟へ向かう。
非常に好奇心の強い参加者の一人の女性が中に入りたい意向だったが、周囲が濡れていて泥だらけになってしまうのでかろうじて自制したのは爽やかなご愛敬だった。
熊は一度使った冬眠窟を2度使う事はしないのは何故か。穴を掘るのが楽ではないかと思ったがそれは人間の浅知恵なのだろうか。
生後一週間というバンビは飛び回るので母親が安全な所に連れて行く
この後知床自然センターに戻り昼食。この時初めて他のグループとの話が弾んだ。カップルは釧路方面からウトロに来て明日は網走方面に向かう我々とはほとんど逆コース。若い夫婦と思ったがまだ結婚前だという。結婚してからはなかなかそうもいかないだろうからと好感のもてる2人だった。
女性2人連れは知床が3回目だという。ファッションも決まって、何事にも興味を持ち自身の生活をエンジョイしている様子がうかがえた。でも、休みが思うように取れなくて今回はウトロ2泊3日の旅だという。明るい現代的な女性たちだった。
好奇心の塊のような女性は木の祠にも挑戦
少し遅めの昼食だったが14時頃レインウエアーと長靴に身を固め、10分ほど移動して原生林に分け入る。入口付近は背丈くらいに伸びている笹を両手でかき分けて進んだ、すぐに笹も低くなりけもの道を少し広くしたような道無き道を進んだ。太い木が多くさすが知床の原生林という感じがしたが、落葉樹が多いせいか昼なお暗い原生林の感じは少しも無く、比較的明るい森の中を進んだ。
2時間くらいの原生林探勝ツアーだったが、何故か非常に良かった印象がある。友人もそうだという。でもさて何が良かったのか具体的に書こうとするとハタとつまってしまった。
イチヤクソウ科のギンリョウソウ 実際は2~3㎝
ラン科のサルメンエビネ 実際は4~5㎝
歩きだして間もなく、山地のやや湿り気のある腐植土に生えるというギンリョウソウ(銀竜草)の奇妙な白い姿があり、絶滅危惧IB類(EN)で地生ランのサルメンエビネも見られた。そして風倒木がアチコチで苔むしており、行きついた小さな池沼は霧が次第に薄れ、幽玄な雰囲気が漂っていた。でもそれだけだ。
霧がはれ湖面が明らかになりました
それなの一番良かったし、印象的だった。
この2時間余りの間、我々8人以外には誰にも会わなかった。小鳥のさえずり以外は何も聞こえなかった。辿った杣道のような泥道は足にやさしかった。そしてしっとりとした森の空気が柔らかかった。そこにはただ自然があった。まったく手垢のつかない原生林があった。
それが最高だった。今回知床を訪ねた意味があったと思った。
昨晩はバイキングだったが今夜は和食で毛ガニが一杯つき満足。夜は知床ナイトシアターに参加。広島出身という若い女性のドライバーガイドの案内で岩尾別温泉までを上下し、途中沿道近くにいる鹿を見、キタキツネの親子は道にいて子狐は道の真ん中を走りまわって危なっかしかった。
鹿はある程度いる所が決まっているようでライトで照らし出されても動じる風は無く、人との共生を図っているかのようだった。