★★たそがれジョージの些事彩彩★★

時の過ぎゆくままに忘れ去られていく日々の些事を、気の向くままに記しています。

カミ家珈琲店

2014年10月27日 20時04分21秒 | 徒然(つれづれ)
 またまた昔の話。
 大学2回生から下宿を京福沿線の八幡前に移した。下宿から大学までは30分ほどで、以前の下宿と比べると半分以下の時間に短縮された。

 下宿を早く出すぎた時や、試験前の時間調整などに時々利用したのが、京福の出町柳駅前のカミ家珈琲店だった。
 駅前に並ぶ、さびれた商店群に同化したその佇まいは、下手をすると見落としてしまうくらいの、喫茶店らしからぬ風情だった。

 小洒落た外観の喫茶店が多い京都の町には、似つかわしくない、昭和30年代の雰囲気を醸し出すその店は、白い日除けのテントに書かれたカミ家珈琲の赤い文字で、やっとそれが喫茶店だとわかった。
 店内も同じように、仄暗く雑然として変な気取りもなく、古き良き時代を色濃く残した調度品も、軋みが聞こえるほどの昭和テイストだった。
 京都を代表するイノダコーヒ店とは、ある意味、対極をなす庶民的な喫茶店だった。

 コーヒーが苦手で、喫茶店でもコーラやレスカ専門だった私も、カミ家のコーヒーだけは美味しいと思った。
 大きめのコーヒーカップにたっぷりと入れられたコーヒーは、苦味や酸味、渋味を極力押さえ、マイルドでまったりとした、他の喫茶店では味わえないない独特の味だった。
 その芳香は鼻腔をくすぐり、熱く芳醇な味は舌に染み渡り、胃の腑をやさしく刺激して、朝の脳を覚醒させた。
 根強いファンが多いというのも頷ける。

 大学を卒業してからも、6年ほど京都に住んでいたので、年に3、4回程度、思いついたら行ったりしていた。
 大阪に居を移してからは、何かの用事でもない限り、京都に行くこともなかったので、長らくご無沙汰していた。
 2008年にネットの情報で閉店になったというのを知って、またひとつ、青春時代の思い出の場所が消えて、すごく残念な気がしたのを覚えている。
コメント
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