故郷の田舎の村の、子供時代のヒエラルキーの話は既報(5/28投稿)の通り。
いつも一緒に遊んでいたのが、小学4年生で、私より二つ上の中隊長のヒロちゃん、二等兵の私、一つ年下の新兵のシン坊とヤスだった。
初冬のその日も、僕たちは中隊長のヒロちゃんを先頭に連れ立って歩いていた。
隣の村を抜けても、ヒロちゃんはズンズン歩いて行く。
僕にとっては、何度か親に連れられてバスで通ったことはあったが、歩くのは初めての道だ。
シン坊やヤスにとっても初めての道のりだ。
初めて見る家並みや神社や雑貨屋に僕たちの心は踊った。
左手には海が見えていた。
眼前に見える、ひょうたん島に似た小さな島に、僕たちははしゃいでいた。
途中からはそのバス通りも外れて知らない道へ入った。
相変わらずヒロちゃんは前進する。
初冬の陽は短い。
急にあたりが陰ってきて、ヤスがもう戻ろうとグズり出した。
僕やシン坊も同じ気持ちだった。
一軒の民家の前で立ち止まったヒロちゃんが言った。
「おいはここの親戚の家に泊まっていくけん、おまえたちは早よ帰れ」
予期せぬ言葉に僕たちは呆然とした。
「気いつけて帰れよ」
そう言うとヒロちゃんは民家の中へ入っていった。
あたりは薄暗くなりかけだ。
躊躇してはいられない。
僕たちは急ぎ足で元来た道を戻り出した。
途中でベソをかくヤスとシン坊をなだめながら、僕たちは必死で家路を急いだ。
芥川龍之介の「トロッコ」を中学で習った時に、あの時のことがデジャブのように甦った。
いつも一緒に遊んでいたのが、小学4年生で、私より二つ上の中隊長のヒロちゃん、二等兵の私、一つ年下の新兵のシン坊とヤスだった。
初冬のその日も、僕たちは中隊長のヒロちゃんを先頭に連れ立って歩いていた。
隣の村を抜けても、ヒロちゃんはズンズン歩いて行く。
僕にとっては、何度か親に連れられてバスで通ったことはあったが、歩くのは初めての道だ。
シン坊やヤスにとっても初めての道のりだ。
初めて見る家並みや神社や雑貨屋に僕たちの心は踊った。
左手には海が見えていた。
眼前に見える、ひょうたん島に似た小さな島に、僕たちははしゃいでいた。
途中からはそのバス通りも外れて知らない道へ入った。
相変わらずヒロちゃんは前進する。
初冬の陽は短い。
急にあたりが陰ってきて、ヤスがもう戻ろうとグズり出した。
僕やシン坊も同じ気持ちだった。
一軒の民家の前で立ち止まったヒロちゃんが言った。
「おいはここの親戚の家に泊まっていくけん、おまえたちは早よ帰れ」
予期せぬ言葉に僕たちは呆然とした。
「気いつけて帰れよ」
そう言うとヒロちゃんは民家の中へ入っていった。
あたりは薄暗くなりかけだ。
躊躇してはいられない。
僕たちは急ぎ足で元来た道を戻り出した。
途中でベソをかくヤスとシン坊をなだめながら、僕たちは必死で家路を急いだ。
芥川龍之介の「トロッコ」を中学で習った時に、あの時のことがデジャブのように甦った。
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