それまではアウトドア派だった僕は、俄然インドア派になった。
学校から帰るとテレビの前に釘付けだ。
当時のテレビは真空管式で、スイッチを入れてから画面が表示されるまで2、30秒ほどのタイムラグがあった。
画面が表示されても、縦ブレ、横ブレがあり、それを本体横のツマミで調整して、初めて正常な映像が現れた。
ダイアル式のチャンネルは12まで数字が刻まれていたが、視聴可能なチャンネルは、NHKを含め3つしかなかった。
しかし僕にとってはそれで十分だった。
テレビ番組を観られるということだけで画期的なことだったのだ。
それは今のパソコン以上のカルチャーショックを巻き起こした。
パソコンは事前に仕事で慣れていったが、テレビはある日突然だったからだ。
午後3時前後には、テストパターンと呼ばれる丸い幾何学デザインの静止画面になり、1時間前後の放送休止時間帯があった。
記憶に残っている当時の夕方以前の番組は、ローハイドや紅孔雀、琴姫七変化、少年ジェットなどだ。
コマーシャルでは、ワンダフルKという食器用洗剤やミツワ石鹸がなぜか印象に残っている。
ゴールデンタイムは夕食を食べるのももどかしく、テレビの前に噛りついていた。
9時の就寝時間までは、テレビワンダーランドの時間だった。
僕たちはテレビに育てられたといっても過言ではない。
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